結論:ウォームアップは「声を温める準備運動」。低い負荷から少しずつ始めるのが、声を守りながらよく出すコツです。
歌う前や声を使う仕事の前には、声の準備運動をします。これがウォームアップです。いきなり大きな声を出すのは、おすすめしません。声を出す「のどのひだ」が、まだ温まっていないからです。
このひだは、専門的には「声帯(せいたい)」と呼ばれます。冷えたままだと、かたくて動きにくいのです。準備運動をすると、血のめぐりがよくなります。すると、ひだがやわらかくなり、少しの息でも声が出やすくなります。
ウォームアップで体の中に起きること
声の準備運動には、はっきりとした理由があります。事典では、おもに次のことが起きると説明されています。
- ひだの温度が上がり、やわらかく動くようになる
- まわりがうるおって、なめらかにふるえる
- 声を出すのに必要な息の力が、少なくてすむようになる
- 声を出す筋肉どうしの連けいが、ととのう
つまり、ウォームアップは「気合い」ではありません。体のしくみにそった、理にかなった準備です。とくに朝は念入りにしてください。起きたばかりの声は、少しむくんだ状態だからです。
まず使いたい「軽い声出し」
最初は、のどに負担の少ないやり方から始めます。代表的なものを3つ紹介します。
- リップトリル:くちびるを「ブルブル」とふるわせながら声を出す
- ハミング:口を閉じて「んー」と鼻にひびかせる
- ストロー発声:細いストローに、声を出しながら息を通す
この3つには共通点があります。声の出口を少しだけふさぐやり方です。出口をせまくすると、ひだへの負担がぐっと減ります。声がつかれているときでも、安心して使えます。むずかしく言うと「半閉鎖(はんへいさ)」という考え方です。覚えなくて大丈夫です。
体ほぐしから音階まで、順番の例
声だけでなく、体もほぐすと効果が高まります。事典がすすめる流れを、やさしくまとめます。
- かたや首を軽くのばす(5分くらい)
- リップトリルやハミングで、小さく声を出す(5分くらい)
- 音階(ドレミ)を、低い音から少しずつ広げる(10分くらい)
- 歌う曲のむずかしい所を、弱い声で確かめる(5分くらい)
全部で15分から25分が目安です。寒い日は、もう少し長めにとってください。寒さでひだがかたくなるからです。あたたかい飲み物も助けになります。
注意してほしいことがあります。ウォームアップをしても、痛みや強い不調が続くときは無理をしないでください。その場合は、声の専門の病院など、専門機関へ相談してください。
教えるときに役立つこと
人に教える立場になると、見え方が変わります。大切なのは、生徒さんの「今日の声」に合わせることです。
- 体調やつかれ具合を、まず一言たずねる
- 元気な日と、声がかれた日で、内ようを変える
- 「正しいフォーム」より「負担の少なさ」を先に伝える
生徒さんは、準備運動をはぶきたがることがあります。なぜ必要かを、体のしくみで説明できると説得力が出ます。「ひだが温まると、少しの息で声が出る」と伝えてみてください。理由がわかると、生徒さんは自分から続けやすくなります。これは、教える人ならではの大事な力です。
声を教える仕事に興味がわいたら、適性診断で確かめてみてください。あなたの今の強みが、やさしく見えてきます。
よくある質問
- ウォームアップはどのくらいの時間やればいいですか?
- 15分から25分くらいが目安です。体ほぐし、軽い声出し、音階の順で進めます。寒い日や朝は、もう少し長めにすると安心です。
- 声がつかれているときも、ウォームアップしていいですか?
- はい。むしろ、のどにやさしいやり方なら役立ちます。リップトリルやハミングは負担が少ないので、つかれた日にも使えます。ただし痛みが強いときは休み、専門機関へ相談してください。
- リップトリルやハミングが、なぜのどにやさしいのですか?
- どちらも声の出口を少しだけふさぐやり方だからです。出口がせまくなると、声を出すひだへの負担が減ります。だから安全に声を温められます。
参考にした一次情報
- MUSEION 声楽用語事典(練習法(ウォームアップ)の章)

