発声前のウォームアップ完全ガイド

やり方ケン監修: 上野目 泰之3

声の準備運動「ウォームアップ」のしくみと、のどにやさしい順番を、中学生にもわかる言葉でやさしく解説します。

結論:ウォームアップは「声を温める準備運動」。低い負荷から少しずつ始めるのが、声を守りながらよく出すコツです。

歌う前や声を使う仕事の前には、声の準備運動をします。これがウォームアップです。いきなり大きな声を出すのは、おすすめしません。声を出す「のどのひだ」が、まだ温まっていないからです。

このひだは、専門的には「声帯(せいたい)」と呼ばれます。冷えたままだと、かたくて動きにくいのです。準備運動をすると、血のめぐりがよくなります。すると、ひだがやわらかくなり、少しの息でも声が出やすくなります。

ウォームアップで体の中に起きること

声の準備運動には、はっきりとした理由があります。事典では、おもに次のことが起きると説明されています。

  • ひだの温度が上がり、やわらかく動くようになる
  • まわりがうるおって、なめらかにふるえる
  • 声を出すのに必要な息の力が、少なくてすむようになる
  • 声を出す筋肉どうしの連けいが、ととのう

つまり、ウォームアップは「気合い」ではありません。体のしくみにそった、理にかなった準備です。とくに朝は念入りにしてください。起きたばかりの声は、少しむくんだ状態だからです。

まず使いたい「軽い声出し」

最初は、のどに負担の少ないやり方から始めます。代表的なものを3つ紹介します。

  • リップトリル:くちびるを「ブルブル」とふるわせながら声を出す
  • ハミング:口を閉じて「んー」と鼻にひびかせる
  • ストロー発声:細いストローに、声を出しながら息を通す

この3つには共通点があります。声の出口を少しだけふさぐやり方です。出口をせまくすると、ひだへの負担がぐっと減ります。声がつかれているときでも、安心して使えます。むずかしく言うと「半閉鎖(はんへいさ)」という考え方です。覚えなくて大丈夫です。

体ほぐしから音階まで、順番の例

声だけでなく、体もほぐすと効果が高まります。事典がすすめる流れを、やさしくまとめます。

  • かたや首を軽くのばす(5分くらい)
  • リップトリルやハミングで、小さく声を出す(5分くらい)
  • 音階(ドレミ)を、低い音から少しずつ広げる(10分くらい)
  • 歌う曲のむずかしい所を、弱い声で確かめる(5分くらい)

全部で15分から25分が目安です。寒い日は、もう少し長めにとってください。寒さでひだがかたくなるからです。あたたかい飲み物も助けになります。

注意してほしいことがあります。ウォームアップをしても、痛みや強い不調が続くときは無理をしないでください。その場合は、声の専門の病院など、専門機関へ相談してください。

教えるときに役立つこと

人に教える立場になると、見え方が変わります。大切なのは、生徒さんの「今日の声」に合わせることです。

  • 体調やつかれ具合を、まず一言たずねる
  • 元気な日と、声がかれた日で、内ようを変える
  • 「正しいフォーム」より「負担の少なさ」を先に伝える

生徒さんは、準備運動をはぶきたがることがあります。なぜ必要かを、体のしくみで説明できると説得力が出ます。「ひだが温まると、少しの息で声が出る」と伝えてみてください。理由がわかると、生徒さんは自分から続けやすくなります。これは、教える人ならではの大事な力です。

声を教える仕事に興味がわいたら、適性診断で確かめてみてください。あなたの今の強みが、やさしく見えてきます。

よくある質問

ウォームアップはどのくらいの時間やればいいですか?
15分から25分くらいが目安です。体ほぐし、軽い声出し、音階の順で進めます。寒い日や朝は、もう少し長めにすると安心です。
声がつかれているときも、ウォームアップしていいですか?
はい。むしろ、のどにやさしいやり方なら役立ちます。リップトリルやハミングは負担が少ないので、つかれた日にも使えます。ただし痛みが強いときは休み、専門機関へ相談してください。
リップトリルやハミングが、なぜのどにやさしいのですか?
どちらも声の出口を少しだけふさぐやり方だからです。出口がせまくなると、声を出すひだへの負担が減ります。だから安全に声を温められます。

参考にした一次情報

  • MUSEION 声楽用語事典(練習法(ウォームアップ)の章)