世界の歌・民族唱法にふれる

解説カンタ監修: 上野目 泰之2

世界の歌や民族の歌い方にふれると、声の世界が広がります。でも、どの歌も土台は同じ発声です。やさしく紹介します。

結論:世界の歌は楽しい。でも土台は同じ発声です

世界にはたくさんの歌があります。歌い方も、国や地域でちがいます。ふれてみると、声の世界がぐっと広がります。

でも、ひとつ大切なことがあります。どの歌でも、土台は同じです。息の支えと、のどを締めない発声。ここは変わりません。

「民族唱法」ってなに?

民族唱法とは、その土地で生まれ育った歌い方のことです。地域のくらしや言葉と、深く結びついています。

たとえば、こんな声があります。

  • ヨーデル — アルプスの地方の歌い方です。低い声と高い声を、すばやく行き来します。
  • ベルカント — イタリアで育った歌い方です。なめらかに、声を遠くまで運びます。
  • 日本の民謡 — 「こぶし」と呼ばれる、声のゆれが特ちょうです。

どれも、その土地の自然や言葉から生まれました。

まず「聞く」ことから始めよう

世界の歌は、いきなり真似しなくて大丈夫です。まずは、たくさん聞くことから始めます。

耳が音に慣れると、ちがいに気づきやすくなります。「この声は、どこから響いているのかな」。そう考えながら聞くと、学びが深まります。

聞く力は、教える人にも役立ちます。生徒さんの声を聞き分ける力に、つながるからです。

版権切れの楽曲から始めると安心

世界の歌にふれるなら、版権切れの曲がおすすめです。版権切れとは、作った人が亡くなって長い年月がたち、自由に使えるようになった曲のことです。

楽譜を無料で手に入れやすく、練習に使いやすいです。たとえば、こんな曲があります。

  • 野ばら(シューベルト) — ドイツの有名な歌曲です。短くて、最初の一曲に向いています。
  • アヴェ・マリア(シューベルト) — なめらかに声をのばす練習になります。
  • 夕焼小焼(草川信) — 日本の童謡です。やさしい言葉で歌えます。

国がちがっても、息の使い方は同じです。曲を通して、土台を育てられます。

体に痛みを感じたら、無理をしない

慣れない歌い方を試すと、のどに力が入ることがあります。少しでも痛みや、強い不調を感じたら、すぐに休みましょう。

そのうえで、痛みや強い不調が続くときは、専門の医療機関へ相談してください。歌は、声をこわさずに楽しむものです。

教えるときに役立つこと

世界の歌を知っておくと、教えるはばが広がります。

生徒さんの「歌いたい曲」は、人それぞれです。いろいろな歌い方を知っていれば、その願いに寄りそえます。

また、世界の歌を入り口に、発声の土台を教えることもできます。「この民謡を歌うには、まず息の支えから」。そんな案内ができる人は、よい指導者になります。教える道も、声に関わる生き方のひとつです。

自分に合う関わり方を知る

世界の歌を、歌って楽しみたいのか。だれかに伝えたいのか。気持ちは、人それぞれです。

ひとりで考えても、答えは出にくいものです。適性診断で、いまの自分に合う進み方を確かめてみてください。

よくある質問

民族唱法は、独学でも学べますか?
聞いたり、まねしてみたりは、独りでもできます。ただし、声をこわさない歌い方は自分では気づきにくいです。土台の発声は、人に見てもらいながら学ぶと安心です。
どの曲から始めるとよいですか?
版権切れの短い曲がおすすめです。たとえばシューベルトの「野ばら」や、日本の童謡「夕焼小焼」です。楽譜を手に入れやすく、言葉もやさしいので、最初の一曲に向いています。
いろいろな歌い方を学ぶと、声が混ざってしまいませんか?
土台の発声が同じなので、心配は少ないです。むしろ、息の支えがしっかりしていれば、歌い方を切りかえやすくなります。まずは一つの曲を、ていねいに育てるとよいです。

参考にした一次情報

  • MUSEION 版権切れ声楽データベース vocal_works(歌曲・童謡カテゴリ)
  • シューベルト 野ばら D.257 / アヴェ・マリア D.839(IMSLP・パブリックドメイン)
  • 草川信 夕焼小焼(1948年没・2019年パブリックドメイン)