音楽を続けながら働くという形

解説みち監修: 上野目 泰之9

音楽はやめるか専業かの二択ではなく、働きながら続ける形がいくつもあること、その土台は発声であり、版権切れの曲や「教える道」も選べることをやさしく紹介します。

音楽は「やめる」か「専業」かの二択ではありません。働きながら続ける形が、いくつもあります。

「歌を続けたいけど、仕事もある」。
そう悩む人は多いです。
でも、ゼロか百かで決めなくて大丈夫です。
仕事と音楽は、組み合わせて持てます。
ここでは、その組み合わせ方を、やさしく整理します。

まず土台は「声を出す力」です

どんな道を選ぶときも、出発点は同じです。
それは「発声」です。
発声とは、息と声帯と響きをうまく使うことです。
歌う人も、話す仕事の人も、この土台の上に立ちます。

土台がしっかりすると、応用が利きます。
合唱もできます。
朗読もできます。
人に伝えることもできます。
だから、まず発声をていねいに育てると、選べる道が広がります。

ただし、無理は禁物です。
のどに痛みや強い違和感があるときは、休んでください。
そして、専門の機関に確認してください。

働きながら続ける「形」の例

音楽との付き合い方には、いろいろな形があります。
代表的なものを並べます。

  • 平日は別の仕事、週末は合唱や演奏。生活を保ちながら、声を出す喜びを続ける形です
  • 地域の集まりで歌う。発表会や小さな会で、人前に立つ経験を積む形です
  • 録音や配信で発表する。自分のペースで作品を残す形です
  • 少しずつ人に教える。学んだことを、次の人に渡す形です

どれが上で、どれが下、ということはありません。
自分の暮らしに合うものを選べば、それで十分です。

レパートリーは「版権切れ」から始めると安心です

歌う曲を選ぶとき、悩みやすいのが権利の問題です。
そこでおすすめなのが「版権切れ」の曲です。
版権切れとは、作った人の死後70年がたち、自由に使えるようになった曲のことです。
日本では、亡くなった年が1953年より前の作曲家が、その目安です。

たとえば、次のような曲が使えます。

  • バッハやヘンデルの宗教曲のソロ。声の土台づくりによく使われます
  • モーツァルトやシューベルトの歌曲。やさしい旋律で学びやすいです
  • 滝廉太郎の日本の歌。1903年に亡くなり、自由に歌えます

これらは、楽譜の共有サイトから手に入ります。
合唱の楽譜なら「CPDL」、独唱や器楽なら「IMSLP」がよく知られています。
新しい編曲には別の権利が残ることがあるので、古い版を選ぶと安心です。

教える側になる道もあります

音楽を続ける形のひとつに、「教える」があります。
自分が歌うだけでなく、人の声を支える道です。

教えるときに役立つのは、やはり発声の土台です。
土台を言葉で説明できると、相手に伝わります。
「なぜ、のどが楽になるのか」を語れる人は、信頼されます。

版権切れの曲は、教える場面でも便利です。
楽譜を生徒に配っても、権利の心配がありません。
だから、レッスンの題材にしやすいのです。

教える道は、専業でなくても始められます。
週に1人だけでも、立派な一歩です。
ひとりで抱え込まず、学びながら進めば大丈夫です。

自分に合う形を、いっしょに探しましょう

ここまで、いくつもの形を見てきました。
どれを選ぶかは、あなたの暮らしと気持ち次第です。
正解はひとつではありません。

「自分はどの形が向いているかな」。
そう思ったら、まずセルフチェックで確かめてみてください
やさしい質問に答えるだけで、向いている方向が見えてきます。
焦らず、一歩ずついきましょう。

声の違和感があるときの線引き

声の痛み、声がれ、強い違和感が続く場合は、練習を止め、耳鼻咽喉科などの医療機関を受診してください。ここでの内容は、診断や治療を目的にしたものではなく、日々の学び方を整理するための読みものです。

一度離れた時間も使える

音楽を続ける理由を、自分の言葉で説明し直す時期がありました。進路や再開の記事では、その迷いを急いで消さないようにしています。

私の入口は、いつも特別な舞台だったわけではありません。入口は小学校の合唱と、家にあった古いキーボード。高校で声楽を学び始め、音楽大学進学を考えた時期があります。音楽を学んだあと、事務職や制作補助など演奏以外の仕事も経験。離れた時間を経て、音楽との距離を作り直すテーマを持つようになりました。ここで書くときも、読者が自分の足元から考えられる順番を大切にします。

音楽や声との関わり方は、仕事にするか、趣味に戻すかの二択だけではありません。

「音楽を続けながら働くという形」を扱うとき、私は立派な結論より先に、読者の中でひとつ緊張がほどける瞬間を見たいです。だから私は、急いで戻らなくていい、と言える文章にしたいです。

好きだった音を思い出す

日本歌曲、リート、静かな映画音楽。強い成功物語より、人生の途中で何度も聴き直せる曲に惹かれます。その聞き方が、私の中では「音楽を続ける」の見方にもつながっています。リズムは大きく揺れるテンポ・ルバートに惹かれます。決めた拍に乗るより、言葉と呼吸で少し伸び縮みする音楽が好きです。声は白黒で判定するより、動いたところを拾うほうが続きます。

「働きながら」は、技術の名前だけで見ると少し固くなります。けれど実際には、声を出す場面、聞いている相手、続けられる練習量で必要な答えが変わります。私は、その揺れを悪いものとして扱わず、進み方を決める材料にしたいです。

戻りたいのに動けない日

私が「音楽を続けながら働くという形」を考えるとき、最初に思い浮かべるのは大きな成功例ではありません。「今週使える時間を書き出す」のような、手触りのある小さな場面です。「音楽を続ける」という言葉は知識として覚えるだけだと遠くなりますが、日常の動きに戻すと、急に自分の問題として見えやすくなります。

「音楽を続ける」を調べるほど、情報は増えます。増えるほど、自分が何に困っていたのかがぼやけることもあります。

私なら、まず「昔の楽譜を開く」を一つだけ試します。うまくできたかより、体や気持ちがどう動いたかを見るためです。声の話は、そこでようやく自分のものになります。

仕事と趣味を分けすぎない

最初から正解を一つにしようとすると、声のことは急に苦しくなります。私は、まず紙の上で三つに分けます。

  • 今日の自分で試せること
  • 人に聞いたほうが早いこと
  • いったん保留してよいこと

「音楽を続ける」と「働きながら」を同じ箱に入れたままだと、悩みが大きく見えます。分けてみるだけで、今動かす場所と、まだ触らなくていい場所が見えます。

諦めるか続けるかの二択ではなく、今の生活に合う距離を探す視点を大切にしています。

使える時間を書き出す

今日できることは、いまの生活で声や音楽に使える時間を、理想ではなく現実の数字で見ることです。

紙でもスマホのメモでもかまいません。まずは「音楽を続けるについて気になること」「働きながらについて不安なこと」「今日ならできそうなこと」を一行ずつ書いてみます。

余裕があれば、「今週使える時間を書き出す」も試してみてください。大きな決断をする前に、小さく記録する。そのほうが、自分の変化に気づきやすくなります。

遠回りを言葉にする

誰かの相談を受ける立場になったとき、自分の遠回りや迷いも、同じ場所で立ち止まる人への手がかりになります。

誰かの声を見るときは、正しい説明を渡す前に、相手が何を怖がっているのかを聞く必要があります。「音楽を続ける」の理解も、そこを飛ばすと押しつけになりやすいです。

自分が迷った場所を覚えていることは、弱さではありません。相手の迷いを急がせないための、大事な手がかりになります。

小さな入口を残す

離れた時間があったからこそ、もう一度戻る人のためらいを急かしたくないと思っています。

私が最後に置きたいのは、急いで決めるための結論ではありません。「音楽を続けながら働くという形」を読んだあと、自分の声や働き方を少し具体的に見られることです。

声と音楽を続ける道は、一度離れた経験も含めて作り直せます。

今日残すなら、一つだけで十分です。録音する、メモする、誰かに相談する、声診断で現在地を見る。その小さな行動が、次の記事や次の練習につながります。

声診断に渡す前のメモ

読み終えたあとに少しでも引っかかる言葉が残ったなら、そのままLINEの声診断へ持っていくと整理しやすくなります。声診断で見たいのは、あなたを一つのタイプに押し込めることではなく、今の悩みと次に試す入口を分けることです。

「音楽を続ける」が気になったなら、どの場面で気になったのかを一言で残しておく。「働きながら」が不安なら、独学で進めたいのか、誰かに聞きたいのかを分けておく。これだけで、診断結果を受け取ったときに自分の感覚と照らし合わせやすくなります。

私は、声の学びを焦りから始めなくていいと思っています。今の声をどう扱いたいのか、どんな人に届けたいのか。そこを静かに見るための入口として、声診断を使ってみてください。

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よくある質問

会社で働きながら、本当に音楽を続けられますか?
はい、続けられます。週末だけ歌う、地域の会に参加する、録音で発表するなど、暮らしに合わせた形が選べます。専業にしなくても、音楽との付き合い方はいくつもあります。自分のペースで大丈夫です。
歌う曲は、どこで手に入れればよいですか?
版権切れ(亡くなった人の死後70年がたった曲)なら、楽譜の共有サイトから無料で手に入ります。合唱はCPDL、独唱や器楽はIMSLPがよく知られています。新しい編曲には権利が残ることがあるので、古い版を選ぶと安心です。
教える側になるには、プロの歌手でないとだめですか?
いいえ、その必要はありません。大切なのは発声の土台を、言葉で相手に伝えられることです。週に1人から始めても立派な一歩です。学びながら、ひとりで悩まずに進めば大丈夫です。

参考にした一次情報

  • CPDL(Choral Public Domain Library / ChoralWiki) — 版権切れ合唱譜の共有サイト
  • IMSLP(国際楽譜ライブラリープロジェクト) — 版権切れの楽譜アーカイブ
  • 日本の著作権法 — 保護期間は著作者の死後70年(2018年改正)
  • 滝廉太郎(1879-1903) — 日本の作曲家・死後70年経過によりパブリックドメイン

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