歌い手・ボカロ文化と声の仕事

解説ハル監修: 上野目 泰之9

歌い手やボカロ文化など、声に関わる多様な仕事と生き方を、やさしい言葉で紹介します。どの道も土台は発声だと伝える記事です。

声を使う道はたくさんあり、どれも土台は「発声」です

声の仕事は、歌手だけではありません。歌い手、ボカロ文化、朗読、ナレーション。形はいろいろあります。

でも、共通する土台がひとつあります。それが発声です。土台がしっかりすると、どの道でも声が安定します。順番に見ていきましょう。

「歌い手」という生き方

歌い手とは、動画サイトなどで歌を発表する人のことです。学校や事務所に入らなくても、活動を始められます。

歌い手の魅力は、自分らしさが出せることです。曲の選び方や声の色で、その人の個性が伝わります。

ただし、楽しさと体の負担は別の話です。長く続けるには、声をこわさない使い方が要ります。ここで効いてくるのが、やはり発声の土台です。

ボカロ文化と声

ボカロとは、コンピューターで歌声を作る技術のことです。ここから、たくさんの新しい曲が生まれました。

おもしろいのは、人が歌う声との関係です。ボカロの曲を、生身の声で歌い直す人も多くいます。

機械の声と人の声。ちがいを知ると、自分の声の良さに気づけます。人の声にしか出せない表現がある。それを見つけるのも、発声を学ぶ楽しみのひとつです。

レパートリーは「版権切れ」から始めると安心

レパートリーとは、自分が歌える曲のことです。練習用の曲を選ぶとき、おすすめがあります。

それは、版権切れの曲です。版権切れとは、作った人が亡くなってから長い年月がたち、自由に使えるようになった曲のことです。

たとえば、こんな曲があります。

  • 滝廉太郎の「荒城の月」「花」など、日本の古い歌
  • モーツァルトやシューベルトの歌
  • 昔から歌いつがれてきた、各国の童謡

これらは練習に使いやすく、楽譜も手に入れやすいです。声の基本を学ぶ題材として、長く愛されてきました。新しい曲の利用ルールが心配なときも、まず版権切れの曲なら安心して取り組めます。

体の声に、耳をかたむける

どの道を選んでも、体は大切な道具です。声がかれた日は、無理をしないでください。

声は、休むと回復します。練習をがんばる日と、休む日。両方あって長く続きます。

もし、痛みや強い違和感が続くときは、専門の機関へ確認してください。これは、声を長く使うための大事な習慣です。

教える側になる道もあります

声の道には、もうひとつの選び方があります。それは、だれかに教える側になることです。

自分が学んだことは、人に伝えられます。発声の土台を言葉で説明できると、教える力になります。

教えるときに役立つことが、ひとつあります。それは、生徒さんに合った曲を選べることです。

  • 声の高さに合った曲を、版権切れの中から選ぶ
  • むずかしさを、少しずつ上げていく
  • なぜその曲なのかを、やさしく説明する

歌う力と、教える力。これは別の力です。どちらも、練習で育てられます。「自分にも教えられるかも」。そう思えたら、それも立派なひとつの道です。

まず、自分の向き不向きを知ろう

ここまで、いくつもの道を見てきました。歌い手、ボカロ文化、版権切れのレパートリー、そして教える道です。

どれが正解、ということはありません。大切なのは、自分に合った道を知ることです。「これになれる」と決めつけず、まず自分を知るところから始めましょう。

自分の声や性格が、どの道に向いているか。気になった方は、セルフチェックで確かめてみてください。短い質問に答えるだけで、向いている方向のヒントが見つかります。

声の違和感があるときの線引き

声の痛み、声がれ、強い違和感が続く場合は、練習を止め、耳鼻咽喉科などの医療機関を受診してください。ここでの内容は、診断や治療を目的にしたものではなく、日々の学び方を整理するための読みものです。

答えを急がなくていい理由

音楽や声との関わり方は、仕事にするか、趣味に戻すかの二択だけではありません。

私の入口は、いつも特別な舞台だったわけではありません。小学生のころ、母が台所で流していたJ-POPを真似して歌ったのが入口。中学では軽音部に近い有志バンドで初めて人前に立ちました。学生のころはカフェや小さなライブバーで弾き語りを経験。社会人になってから本番前の声枯れをきっかけに、発声を学び直しました。ここで書くときも、読者が自分の足元から考えられる順番を大切にします。

学生のころのバンド仲間から、ライブ前の不安や録音の聞き返し方を相談されることがあります。うまく励ますより、まず一緒に怖さの形を見るほうが、声は戻りやすいと感じています。

私が「歌い手・ボカロ文化と声の仕事」で大切にしたいのは、知識を増やすことだけではありません。読んだ人が、自分の声や生活に一度戻れることです。自分を責めている人に、最後は「今日ならこれだけ」と戻れる言葉を置きたいです。

音楽との距離を測り直す

言葉が前に出るミディアムテンポのバラードや、サビで少しだけ空が開くようなポップス。派手な技巧より、歌詞の息づかいが見える曲を好みます。その聞き方が、私の中では「歌い手」の見方にもつながっています。得意なのは8ビートの後ろに少し乗る歌い方。苦手だったのは16分の細かいノリで、走らないために右手のストロークをかなり観察してきました。声は白黒で判定するより、動いたところを拾うほうが続きます。

同じ「ボカロ」でも、歌う人、話す人、教える人、運営する人では見える景色が変わります。私はその違いを、向き不向きの一言で終わらせたくありません。声の高さ、言葉の置き方、リズムへの乗り方、安心する響き。その人が自然に選んできたものの中に、次に伸ばせる方向が残っています。

昔の自分と比べるとき

私が「歌い手・ボカロ文化と声の仕事」を考えるとき、最初に思い浮かべるのは大きな成功例ではありません。「歌い直す前に、まず自分の声を責めないこと」のような、手触りのある小さな場面です。「歌い手」という言葉は知識として覚えるだけだと遠くなりますが、日常の動きに戻すと、急に自分の問題として見えやすくなります。

「歌い手」を調べるほど、情報は増えます。増えるほど、自分が何に困っていたのかがぼやけることもあります。

私なら、まず「本番前の息の整え方」を一つだけ試します。うまくできたかより、体や気持ちがどう動いたかを見るためです。声の話は、そこでようやく自分のものになります。

関わり方を一つにしない

最初から正解を一つにしようとすると、声のことは急に苦しくなります。私は、まず紙の上で三つに分けます。

  • 今日の自分で試せること
  • 人に聞いたほうが早いこと
  • いったん保留してよいこと

「歌い手」と「ボカロ」を同じ箱に入れたままだと、悩みが大きく見えます。分けてみるだけで、今動かす場所と、まだ触らなくていい場所が見えます。

だから、うまくできない人を急かさず、怖さがほどける順番を大切にしています。

今の生活に置いてみる

今日できることは、いまの生活で声や音楽に使える時間を、理想ではなく現実の数字で見ることです。

おすすめは、三行だけ書くことです。一行目に気になること、二行目に不安、三行目に今日の行動。「歌い手」も「ボカロ」も、この大きさまで下げると急に扱いやすくなります。

できそうなら「コード譜の端に残す短いメモ」まで試してください。変化が小さくても、その小ささを残しておくことが次の手がかりになります。

迷いも手がかりにする

誰かの相談を受ける立場になったとき、自分の遠回りや迷いも、同じ場所で立ち止まる人への手がかりになります。

「歌い手」を人に伝える場面では、知っていることを全部話すより、相手が次に試せる形まで小さくするほうが届きます。

一度で変えようとしない。できた瞬間を見逃さない。違和感があるなら止まる。この三つを持っているだけでも、教える言葉はずいぶん落ち着きます。

声との距離を作り直す

録音を聞き返すのがつらかった時期があるので、最初の一歩はいつも小さく置きたいと思っています。

私が最後に置きたいのは、急いで決めるための結論ではありません。「歌い手・ボカロ文化と声の仕事」を読んだあと、自分の声や働き方を少し具体的に見られることです。

声と音楽を続ける道は、一度離れた経験も含めて作り直せます。

今日残すなら、一つだけで十分です。録音する、メモする、誰かに相談する、声診断で現在地を見る。その小さな行動が、次の記事や次の練習につながります。

声診断に渡す前のメモ

読み終えたあとに少しでも引っかかる言葉が残ったなら、そのままLINEの声診断へ持っていくと整理しやすくなります。声診断で見たいのは、あなたを一つのタイプに押し込めることではなく、今の悩みと次に試す入口を分けることです。

「歌い手」が気になったなら、どの場面で気になったのかを一言で残しておく。「ボカロ」が不安なら、独学で進めたいのか、誰かに聞きたいのかを分けておく。これだけで、診断結果を受け取ったときに自分の感覚と照らし合わせやすくなります。

私は、声の学びを焦りから始めなくていいと思っています。今の声をどう扱いたいのか、どんな人に届けたいのか。そこを静かに見るための入口として、声診断を使ってみてください。

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よくある質問

歌い手になるのに、事務所や学校は必要ですか?
かならずしも必要ではありません。動画サイトなどで、一人でも活動を始められます。ただし長く続けるには、声をこわさない発声の土台があると安心です。
なぜ練習に版権切れの曲がおすすめなのですか?
版権切れの曲は、自由に使えて楽譜も手に入れやすいからです。滝廉太郎の歌や昔の童謡など、声の基本を学ぶ題材として長く愛されてきました。利用ルールの心配が少ないのも利点です。
歌うのが上手でないと、教える側にはなれませんか?
歌う力と教える力は別の力です。発声のしくみを言葉で説明できることや、生徒さんに合う曲を選べることが、教える力になります。どちらも練習で育てられます。

参考にした一次情報

  • MUSEION 版権切れ声楽データベース(vocal_works・CPDL / IMSLP 一次出典)
  • MUSEION 声楽用語事典(発声生理の章)

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