音楽で複数の収入を組み合わせる

解説みち監修: 上野目 泰之8

歌う・教える・録音などを少しずつ組み合わせて、声と長くつき合う進め方をやさしく紹介します。

結論:仕事は一つに決めず、いくつか組み合わせて支え合う

声の仕事は、一つに絞らなくても大丈夫です。教える・歌う・録音する。こうした関わり方を、少しずつ組み合わせる進め方があります。

組み合わせると、片方が静かな時期でも、もう片方で活動を続けやすくなります。ただし、これは収入を約束する話ではありません。あくまで、声と長くつき合うための考え方です。

そして、どの道も土台は同じです。土台とは、息の支えと、のどを締めない発声です。ここがしっかりしていれば、進む先を後から選べます。

なぜ「組み合わせ」が無理のない進め方なのか

理由は、声の仕事には季節の波があるからです。

たとえば、歌の本番は時期がかたよります。発表会の前は忙しく、終わると静かになります。一つだけに頼ると、その波をそのまま受けます。

そこで、別の関わり方を一つ持っておきます。すると、波がやわらぎ、気持ちにも余裕が生まれます。

組み合わせやすい関わり方の地図

声と関わる道は、ひとつではありません。次のような関わり方があります。

  • 歌う — 自分の声で表現を届けます。
  • 教える — 学んだことを、人に手わたします。
  • 録音や配信 — 声を、遠くの人にとどけます。
  • 裏で支える — 伴奏や進行で、人の演奏を助けます。

どれも、立派に声を仕事にする道です。一つを軸に、もう一つを足す。そんな形から始められます。

レパートリーは「版権切れの曲」から広げる

歌う道を足すなら、まず版権切れの曲をおすすめします。版権切れとは、自由に使える状態になった曲のことです。作曲者が亡くなって長い年月がたつと、この状態になります。

これらの曲は、楽譜を自由に手に入れやすいです。練習にも、人前で歌う題材にも向いています。たとえば、こんな曲があります。

  • シューベルトの歌曲 — 「野ばら」や「アヴェ・マリア」。やさしい曲から名曲まで幅広いです。
  • ヴァッカイの練習曲集 — 歌の先生が昔から使う、基礎づくりの教材です。
  • 日本の童謡 — 「浜辺の歌」など。なじみがあり、ことばも届きやすいです。

まず自由に使える曲で土台を作る。その経験は、どの方向に進んでも生きます。

教えるという関わり方を持っておく

組み合わせの一つとして、教える道はとても相性が良いです。

理由は、回り道や、うまくいかなかった経験が強みに変わるからです。つまずいた人ほど、生徒の気持ちがわかります。年齢や経験も、ここでは弱みになりません。

また、教えると、自分の発声をもう一度見直せます。人に説明するには、自分が分かっていないといけないからです。歌う力と教える力は、たがいに育ち合います。

なお、体を使う仕事です。声に痛みや強い違和感があるときは、無理をせず専門機関へ確認してください。

自分に合う組み合わせの見つけ方

どの関わり方を、どう組み合わせるか。これは、ひとりで考えても答えが出にくいものです。

正解は人によってちがいます。今の気持ちや、置かれた状況によっても変わります。だから、まずは自分の状態を整理することから始めましょう。セルフチェックで、合う方向を確かめてみてください。

答えを急がなくていい理由

音楽を続ける理由を、自分の言葉で説明し直す時期がありました。進路や再開の記事では、その迷いを急いで消さないようにしています。

私の入口は、いつも特別な舞台だったわけではありません。入口は小学校の合唱と、家にあった古いキーボード。高校で声楽を学び始め、音楽大学進学を考えた時期があります。音楽を学んだあと、事務職や制作補助など演奏以外の仕事も経験。離れた時間を経て、音楽との距離を作り直すテーマを持つようになりました。ここで書くときも、読者が自分の足元から考えられる順番を大切にします。

音楽や声との関わり方は、仕事にするか、趣味に戻すかの二択だけではありません。

「音楽で複数の収入を組み合わせる」を扱うとき、私は立派な結論より先に、読者の中でひとつ緊張がほどける瞬間を見たいです。だから私は、急いで戻らなくていい、と言える文章にしたいです。

音楽との距離を測り直す

日本歌曲、リート、静かな映画音楽。強い成功物語より、人生の途中で何度も聴き直せる曲に惹かれます。その聞き方が、私の中では「生き方」の見方にもつながっています。リズムは大きく揺れるテンポ・ルバートに惹かれます。決めた拍に乗るより、言葉と呼吸で少し伸び縮みする音楽が好きです。声は白黒で判定するより、動いたところを拾うほうが続きます。

声や音楽の選び方には、その人がこれまで何を大切に聞いてきたかが出ます。強い声に惹かれる人もいれば、語尾の柔らかさに安心する人もいます。私は「働き方」を、そういう聞き方の癖まで含めて見ています。

昔の自分と比べるとき

私が「音楽で複数の収入を組み合わせる」を考えるとき、最初に思い浮かべるのは大きな成功例ではありません。「今週使える時間を書き出す」のような、手触りのある小さな場面です。「生き方」という言葉は知識として覚えるだけだと遠くなりますが、日常の動きに戻すと、急に自分の問題として見えやすくなります。

調べ始めると、正しい方法、避けたほうがよい方法、経験者の意見が一度に出てきます。どれも大事に見えるので、最初の一歩が重くなります。

そんなとき、私は「今週使える時間を書き出す」くらいの小さな確認まで戻します。大きな問題として抱える前に、一回の録音、一文の読み方、次の予約の声かけのように切り出す。そこまで小さくすると、今日扱える範囲が見えてきます。

関わり方を一つにしない

迷いが強いときは、いきなり答えを決めずに、次の三つへ分けてみてください。

  • 今すぐ試せること
  • 誰かに見てもらったほうがよいこと
  • まだ決めなくてよいこと

この分け方をすると、「生き方」の不安と「働き方」の不安が少し離れて見えます。全部を同じ重さで抱えなくていい。私も、遠回りの中で何度もこの考え方に助けられてきました。

諦めるか続けるかの二択ではなく、今の生活に合う距離を探す視点を大切にしています。

今の生活に置いてみる

今日できることは、いまの生活で声や音楽に使える時間を、理想ではなく現実の数字で見ることです。

おすすめは、三行だけ書くことです。一行目に気になること、二行目に不安、三行目に今日の行動。「生き方」も「働き方」も、この大きさまで下げると急に扱いやすくなります。

できそうなら「離れた理由を一度言葉にする」まで試してください。変化が小さくても、その小ささを残しておくことが次の手がかりになります。

迷いも手がかりにする

誰かの相談を受ける立場になったとき、自分の遠回りや迷いも、同じ場所で立ち止まる人への手がかりになります。

「生き方」を人に伝える場面では、知っていることを全部話すより、相手が次に試せる形まで小さくするほうが届きます。

一度で変えようとしない。できた瞬間を見逃さない。違和感があるなら止まる。この三つを持っているだけでも、教える言葉はずいぶん落ち着きます。

声との距離を作り直す

離れた時間があったからこそ、もう一度戻る人のためらいを急かしたくないと思っています。

私が最後に置きたいのは、急いで決めるための結論ではありません。「音楽で複数の収入を組み合わせる」を読んだあと、自分の声や働き方を少し具体的に見られることです。

声と音楽を続ける道は、一度離れた経験も含めて作り直せます。

今日残すなら、一つだけで十分です。録音する、メモする、誰かに相談する、声診断で現在地を見る。その小さな行動が、次の記事や次の練習につながります。

声診断に渡す前のメモ

ここまで読んで、「自分の場合はどこから考えればいいのだろう」と感じたら、LINEの声診断で一度整理してみてください。声診断は、正解を決めつけるためのものではありません。今の声の悩み、興味のある働き方、学びに使える時間を分けて、自分に合う入口を見つけるための確認です。

私が読者に持って帰ってほしいのは、焦りではなく、次に試す一つの行動です。「生き方」が気になるなら、その理由を一文で残す。「働き方」に不安があるなら、誰に相談できそうかを書いておく。声診断に進む前にそれだけでもメモしておくと、結果を見たときに自分の感覚と照らし合わせやすくなります。

声の仕事も、声の学びも、入口は一つではありません。遠回りに見える時間の中に、その人らしい強みが残っていることがあります。今の自分の声をどう扱いたいのか、どんな人に届けたいのか。そこから静かに考え始めることが、長く続く道につながります。

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よくある質問

未経験でも、いくつかの関わり方を組み合わせられますか?
はい、大丈夫です。まずは一つの軸を決めて、慣れてから次を足すと無理がありません。どの道も土台は同じ発声なので、最初に基礎を学ぶことが近道になります。
版権切れの曲は、どこで手に入りますか?
作曲者が亡くなって長い年月がたった曲は、自由に使える楽譜として公開されていることが多いです。シューベルトの歌曲や日本の古い童謡などが当てはまります。使う前に、その曲が本当に自由に使える状態かを確かめると安心です。
教える道は、歌が上手でないと選べませんか?
上手さよりも、相手の気持ちに寄りそう力が大切です。うまくいかなかった経験も、教えるときの強みに変わります。歌う力と教える力は、たがいに育ち合います。

参考にした一次情報

  • MUSEION 版権切れ声楽データベース vocal_works(歌曲・練習曲・童謡のレパートリー)
  • IMSLP / CPDL(パブリックドメイン楽譜の一次提供元)
  • MUSEION 声楽用語事典(発声・呼吸の章)

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