ピッチを安定させるには

やり方ケン監修: 上野目 泰之3

ピッチが安定しないのは才能ではなく、「息の支え」と「自分の声を聞く耳」がそろっていないだけ。どちらも練習でのばせる理由と手順を、やさしく解説します。

結論:ピッチを安定させるカギは「息の支え」と「自分の声を聞く耳」の二つです

ピッチとは、声の高さのことです。ピッチが安定しないのは、才能のせいではありません。多くの場合、息の出し方と、自分の声を聞く力(耳)が、まだそろっていないだけです。この二つは、練習でのばせます。順に見ていきましょう。

そもそもピッチは何で決まるのか

声の高さは、のどにある「声帯」というヒダが、1秒間に何回ふるえるかで決まります。ふるえる回数が多いほど、高い声になります。

  • ふるえる回数の調整は、とても細かい作業です
  • 半音上げるだけでも、ふるえる回数を約6パーセント増やします
  • だから、ほんの少しのズレが、音のはずれに聞こえます

理由1:息の支えがゆれると、音もゆれる

ピッチが安定しない一番の原因は、息の圧力のゆれです。声帯は、はき出す息の圧力でふるえています。だから、息がゆれると、声の高さもゆれます。

専門の知識では、息の圧力が1割ゆれるだけで、音の高さは半音の半分ほどズレることがあると言われています。ほんの少しの息のムラが、大きな音のズレになるのです。

息を支える練習の例を挙げます。

  • ストローで、ゆっくり長く息をはく
  • 一定の強さで「スー」と息を流す
  • おなかの底で息を静かに支える感覚をさがす

理由2:自分の声を聞けると、その場で直せる

ピッチを安定させるには、自分の声を正しく聞く力が欠かせません。耳が「目標の音より低い(高い)」と気づくと、脳がのどに指示を出し、声の高さを直します。この「聞いて、直す」流れが速いほど、ピッチは安定します。

ここで知っておきたいことがあります。自分の声は、二つの道で聞こえています。

  • 空気を通って、耳から聞こえる声
  • ほねを通って、頭の中で聞こえる声

録音した自分の声がいつもと違って聞こえるのは、ほねを通る分が消えるからです。だから録音を聞くと、本当の自分の声に近い形で確かめられます。

理由3:耳は練習でのびる

「音感は生まれつき」と思われがちですが、音と音の高さの差を聞き分ける力は、練習でしっかりのびます。

  • ピアノやチューナーの音と、自分の声を合わせる
  • 楽譜を見て、ドレミで歌ってみる(ソルフェージュ)
  • アプリで、自分のピッチを画面に出して確かめる

毎日少しずつ続けると、耳と声がだんだんつながっていきます。

教えるときに役立つこと

生徒のピッチがはずれるとき、「もっと正確に」と言うだけでは直りません。原因を分けて見ることが大切です。

  • 息がゆれていないか(支えの問題)
  • 自分の声を聞けているか(耳の問題)

まず録音を一緒に聞くと、生徒は自分のズレに気づきやすくなります。次に、画面で高さが見える道具を使うと、言葉だけより早く伝わります。「下がっている」と指摘するより、「息を最後まで支えよう」と動きで伝えると、生徒は直しやすくなります。

なお、声を出すときに痛みや強い不調があるときは、無理をせず、耳鼻いんこう科などの専門機関へ相談してください。

自分に合うか、確かめてみませんか

ここまで読んで「声を教える仕事が気になる」と思ったら、まずは気軽に適性診断で確かめてみてください。あなたの強みや向いている学び方が、やさしく見えてきます。

よくある質問

ピッチが安定しないのは生まれつきの才能のせいですか?
いいえ、多くの場合は才能ではなく、息の支え方と自分の声を聞く力がまだそろっていないだけです。どちらも毎日の練習でのばせます。あせらず続けることが近道です。
なぜ録音した自分の声は、いつもと違って聞こえるのですか?
自分の声は、空気を通って耳に届く分と、ほねを通って頭の中に響く分の二つで聞こえています。録音ではほねを通る分が消えるため、ふだんと違って聞こえます。だから録音は、本当の音を確かめるのに役立ちます。
まず何から練習すればいいですか?
最初は、ストローでゆっくり長く息をはくなど、息を一定に保つ練習がおすすめです。あわせて、ピアノやアプリの音に自分の声を合わせると、耳も育ちます。声を出して痛みや強い不調があるときは、無理をせず専門機関へ相談してください。

参考にした一次情報

  • MUSEION 声楽用語事典(聴覚(ピッチ)の章)