聴音トレーニングの始め方

やり方ケン監修: 上野目 泰之8

聴音は「音を聞いてすぐまねる」短い練習を毎日続けるだけで、だれでも少しずつ伸ばせる耳の力です。

聴音トレーニングは「音をまねる」短い練習を毎日少しずつ続けるのが、いちばんの近道です

聴音(ちょうおん)とは、聞こえた音を聞き分けて、楽譜(がくふ)に書き取る練習のことです。むずかしそうですが、始め方はシンプルです。毎日5分から10分でかまいません。「音を聞く」「すぐに同じ音を声に出す」をくり返すだけで、耳は少しずつ育ちます。

聴音とは何かを、やさしく言うと

聴音は、耳を音楽のために鍛(きた)える練習です。声楽用語事典は、聴音を3つの段階で説明しています。

  • 単音(たんおん): ひとつの音を聞いて、その高さをあてる
  • 和音(わおん): いくつかの音が重なった「ひびき」を聞き分ける
  • 旋律(せんりつ): メロディーを聞いて、音の動きを書き取る

最初は単音だけで十分です。やさしい音から順に進めば、だれでも力がつきます。

「音感」は生まれつきではない

「音感がないから無理」と思う人は多いです。でも安心してください。事典がはっきり書いているのは、「相対音感(そうたいおんかん)は練習で大きくのびる」ということです。

相対音感とは、ある音を基準にして「その音より高いか低いか」を聞き取る力です。たとえば「ドより少し高い」「この2つは同じ高さ」と分かる感覚です。プロの音楽家のほとんどが、この力を持っています。その多くは、練習で身につけたものです。

いちばん効く練習は「聞いて、すぐ歌う」

事典が「もっとも効果的」とすすめているのは、とてもかんたんな方法です。

  1. ピアノやアプリで音をひとつ鳴らす
  2. その音を、すぐに自分の声でまねる
  3. 合っているか、もう一度鳴らして確かめる

これをくり返すと、脳の中で「耳」と「声」がつながります。事典はこれを聴覚運動統合(ちょうかくうんどうとうごう)と呼びます。聞いた音と、出した声の「ズレ」をなおす働きです。初めはズレて当たり前です。回数を重ねるほど、ズレは小さくなります。

道具は身近なものでよい

特別な機械はいりません。スマホのアプリで始められます。

  • EarMaster や Tenutoなどの聴音アプリ: 音を出して、正解かどうかをその場で教えてくれる
  • ピアノアプリ: 基準の音を鳴らすために使う
  • 録音アプリ: 自分の声を録(と)って、あとで聞き直す

録音した自分の声が変に聞こえても、心配いりません。それがふつうです。録音は、自分の音を落ち着いて確かめる、よい方法です。

教えるときに役立つこと

教える側になると、生徒の「耳と声のズレ」をどう縮(ちぢ)めるかが大切になります。事典は、2つのフィードバックをすすめています。

  • 目で見るフィードバック: 鏡を使い、口や姿勢(しせい)を生徒自身に見せる
  • 耳で聞くフィードバック: その場で録音し、すぐに本人と一緒に聞く

この2つを組み合わせると、生徒は自分のズレに気づきやすくなります。また、課題はかならず「やさしい単音」から始めてください。いきなり難しい和音を出すと、自信をなくしがちです。一段ずつ上げるのが、長く続けてもらうコツです。

なお、耳や声の使いすぎで痛みや強い違和感があれば、無理をせず専門機関へ確認するよう伝えてください。

まとめと次の一歩

聴音は、毎日少しの「聞いてまねる」練習で、だれでも育てられる力です。早く上達することより、続けることのほうが大切です。今日から5分、好きな音をまねることから始めてみてください。

声を教える仕事に向いているか気になる方は、セルフチェックで確かめてみてください。自分の強みを知る、やさしいきっかけになります。

まず体で確かめたいこと

発声の話は、専門語が増えるほど自分の体から遠く感じられることがあります。

入口は音楽そのものより、理科室で見た音の波形でした。高校で合唱を始め、体の中で起きていることに興味を持ちました。そのあとにその頃は声楽サークルと音響の勉強会に参加。発声の説明で人を傷つけてしまう怖さを知り、感覚語と解剖学の翻訳を意識するようになりました。声のことを書くとき、僕は入口が小さかった頃の感覚を、できるだけ忘れないようにしています。

体の話をするときは、医療者の友人に言われた『言い切りすぎないほうが人を守れることもある』という言葉をよく思い出します。発声の記事でも、その線引きはかなり大事にしています。

僕が「聴音トレーニングの始め方」で大切にしたいのは、知識を増やすことだけではありません。読んだ人が、自分の声や生活に一度戻れることです。専門的な話でも、最後は「痛みがあるなら止める」「録音で一つだけ確認する」に戻したいです。

録音に残る小さな違い

好きな曲を聞くとき、僕はリズムの感じ方や息の置き方をよく見ます。バロックの整った旋律、母音の流れが見えやすいイタリア歌曲、構造が美しい練習曲。曲の派手さより、声がどう動くかを見ます。だから「聴音トレーニングの始め方」でも、方法の名前より、その人の声が少し動く瞬間を見ます。

「ボイストレーニング」は、技術の名前だけで見ると少し固くなります。けれど実際には、声を出す場面、聞いている相手、続けられる練習量で必要な答えが変わります。僕は、その揺れを悪いものとして扱わず、進み方を決める材料にしたいです。

力みが出やすい場面

僕が「聴音トレーニングの始め方」を考えるとき、最初に戻るのは専門語ではなく、短い録音や鏡の前の一息です。「鏡の前で姿勢を見直す」のような小さな確認を挟むと、「聴音」というテーマが体の反応として見えやすくなります。

「聴音」を調べるほど、情報は増えます。増えるほど、自分が何に困っていたのかがぼやけることもあります。

僕なら、まず「短い録音で力みを聞く」を一つだけ試します。うまくできたかより、体や気持ちがどう動いたかを見るためです。声の話は、そこでようやく自分のものになります。

迷ったら三つに分ける

迷いが強いときは、いきなり答えを決めずに、次の三つへ分けてみてください。

  • 今すぐ試せること
  • 誰かに見てもらったほうがよいこと
  • まだ決めなくてよいこと

この分け方をすると、「聴音」の不安と「ボイストレーニング」の不安が少し離れて見えます。全部を同じ重さで抱えなくていい。僕も、遠回りの中で何度もこの考え方に助けられてきました。

そのため、感覚を否定せず、ただし体の話は言い切りすぎない線引きを大切にしています。

今日の練習を一つだけ選ぶ

今日できることは、長く練習することではなく、短い録音を残して、楽だった瞬間と力んだ瞬間を分けて聞くことです。

おすすめは、三行だけ書くことです。一行目に気になること、二行目に不安、三行目に今日の行動。「聴音」も「ボイストレーニング」も、この大きさまで下げると急に扱いやすくなります。

できそうなら「鏡の前で姿勢を見直す」まで試してください。変化が小さくても、その小ささを残しておくことが次の手がかりになります。

人に伝えるときの言葉

誰かに説明するときは、感覚の言葉と体のしくみをつなぐ翻訳が必要になります。

「聴音」を人に伝える場面では、知っていることを全部話すより、相手が次に試せる形まで小さくするほうが届きます。

一度で変えようとしない。できた瞬間を見逃さない。違和感があるなら止まる。この三つを持っているだけでも、教える言葉はずいぶん落ち着きます。

最後に残しておきたいこと

図や専門語だけでは伝わらないので、台所の道具や風の動きにたとえて説明する癖があります。

「聴音トレーニングの始め方」に答えを出す前に、今の自分がどこで反応したかを残しておいてください。読みながら少し安心したところ、逆に不安が強くなったところ、あとで誰かに聞きたいところ。そのメモが次の入口になります。

声は体の一部なので、痛みや強い違和感があれば練習を止め、専門機関に確認する前提も忘れないでください。

声や音楽の道は、きれいな直線だけでは進みません。立ち止まった日も、あとから見れば必要な確認だったとわかることがあります。

声診断で見えてくる次の一歩

読み終えたあとに少しでも引っかかる言葉が残ったなら、そのままLINEの声診断へ持っていくと整理しやすくなります。声診断で見たいのは、あなたを一つのタイプに押し込めることではなく、今の悩みと次に試す入口を分けることです。

「聴音」が気になったなら、どの場面で気になったのかを一言で残しておく。「ボイストレーニング」が不安なら、独学で進めたいのか、誰かに聞きたいのかを分けておく。これだけで、診断結果を受け取ったときに自分の感覚と照らし合わせやすくなります。

僕は、声の学びを焦りから始めなくていいと思っています。今の声をどう扱いたいのか、どんな人に届けたいのか。そこを静かに見るための入口として、声診断を使ってみてください。

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よくある質問

音感がなくても聴音は身につきますか?
はい。事典によると、ある音を基準に高さを聞き分ける「相対音感」は、練習で大きくのびます。生まれつきの才能ではなく、毎日の積み重ねで育つ力です。
毎日どのくらい練習すればよいですか?
まずは5分から10分で十分です。長い時間を一度にやるより、短くても毎日続けるほうが効果的です。音を聞いてすぐ声でまねる、を気軽にくり返してください。
録音した自分の声が変に聞こえます。やり方が間違っていますか?
いいえ、それがふつうです。ふだん自分の声は体の中を通っても聞こえるため、録音とは少し違って感じます。録音は自分の音を落ち着いて確かめる、よい練習方法です。

参考にした一次情報

  • MUSEION 声楽用語事典(聴覚(聴音)の章)

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