結論:声の老化は止められないが、上手に付き合えば長く声は育つ
年を重ねると、声はかすれやすく、高い音が出にくくなります。これは声を出す部分の「弾力」が少しずつ減るためです。でも、付き合い方を学べば、声は何歳でも育てられます。大切なのは、あわてず、無理をしないことです。
声が変わるしくみ
声は、のどの奥にある2本のひだ(声帯)がふるえて生まれます。このひだは、ゴムのように伸び縮みします。
年を重ねると、このゴムのような弾力が少しずつ減ります。研究では、とくに60歳ごろから目立つと言われています。
弾力が減ると、こんな変化が起きます。
- 声がかすれる(息がもれた感じ)
- 高い音が出しにくくなる
- 長く話すと声がつかれる
- 声が少しふるえる
また、のどのまわりの軟骨(やわらかい骨)が、年とともに固くなります。固くなると声の高さの幅がせまくなります。これも自然な変化です。
だれにでも起きる、こわくない変化
まず知ってほしいのは、これは病気ではなく、だれにでも起きる自然な変化だということです。白髪が増えるのと同じです。
ただし、変化のはやさは人によってちがいます。声をよく使ってきた人は、おとろえがゆるやかなこともあります。「使うこと」が、声を保つ助けになるのです。
声と上手に付き合う4つの習慣
むずかしい道具はいりません。毎日の習慣で、声は守れます。
- 水をこまめに飲む:声のひだは、うるおっているとよくふるえます。かわくと動きが重くなります。
- 声を休ませる:たくさん話した日は、しっかり休む時間をとります。
- ストローでふーっと声を出す:細いストローに息を通しながら声を出すと、のどに負担が少なく練習できます。やさしいウォーミングアップになります。
- 力まない:のどをしめて出す大声は、ひだをいためます。やわらかく、楽に出すのが基本です。
声を使うこと自体にも、よい面があります。声の練習は、食べ物を飲みこむ力を保つことにもつながると言われています。歌うこと、話すことは、体にもやさしい習慣です。
教えるときに役立つこと
声を教える人にとって、年上の生徒さんと向き合う場面は必ず来ます。そのとき役立つ見方をまとめます。
- 「直す」ではなく「付き合う」と伝える:変化を悪いことと決めつけず、今の声を生かす方向で励まします。
- 小さな成功を喜ぶ:昔の声と比べさせないことが大切です。今日できたことに目を向けます。
- 無理をさせない:高い音を急に求めないようにします。楽に出る範囲から少しずつ広げます。
- 休む勇気を教える:つかれた声で続けないことも、立派な練習だと伝えます。
ただし、声を仕事にする人として、ひとつ守ってほしいことがあります。声が急にまったく出ない、のどに強い痛みがある、こうしたときは練習で何とかしようとしないでください。痛みや強い不調があれば、耳鼻いんこう科などの専門機関へ相談するようにすすめてください。 教える人は、お医者さんではありません。学びを支える役と、体を診る役は、はっきり分けることが、生徒さんを守ります。
さいごに
声の変化は、終わりではなく、新しい付き合い方の始まりです。しくみを知れば、こわさは小さくなります。あなたがその知識を持てば、年上の生徒さんの心強い味方になれます。
声を教える仕事が自分に向いているか、まずは適性診断で確かめてみてください。気軽な一歩から始められます。
よくある質問
- 年をとると、もう声はよくならないのですか?
- よくできます。声を出す部分の弾力は減りますが、水分をとる、休ませる、力まずに練習する、といった習慣で声は何歳でも育てられます。昔と同じを目ざすより、今の声を生かす考え方が大切です。
- 高い音が出にくくなりました。練習でむりに出すべきですか?
- むりに出さないでください。のどをいためる原因になります。楽に出る範囲から、少しずつ広げるのが安全です。痛みが出たら練習をやめ、強い不調が続くときは耳鼻いんこう科などの専門機関へ相談してください。
- 声がかすれるのは病気ですか?
- 多くは加齢による自然な変化で、だれにでも起きます。ただし、急に声が出ない、強い痛みがある、長く続いて改善しない、こうした場合は自己判断せず、専門機関で診てもらうと安心です。
参考にした一次情報
- MUSEION 声楽用語事典(声のケア(加齢)の章)

