声を聞き分ける耳の育て方

やり方ケン監修: 上野目 泰之3

声を聞き分ける耳は才能ではなく、練習で育てられます。育て方の手順と、教えるときの活かし方をやさしく解説します。

結論:耳は才能ではなく、練習で育てられます

声を聞き分ける耳は、生まれつきのものではありません。正しい順番で聞く練習をすれば、だれでも育てられます。指導者にとって、これはいちばん大切な土台です。

うまく歌えることより、聞き分ける耳のほうが、教える場面で役に立ちます。

「聞き分ける耳」とは何か

聞き分ける耳とは、声の小さなちがいに気づく力です。

たとえば、息がもれているか。のどが締まっていないか。響きが前に出ているか。こうした点を、声を聞いただけで見つけられる力です。

これがあると、生徒さんのどこを直せばいいかが分かります。逆に、ここがあいまいだと、的を外した指導になってしまいます。

まず「自分の声」から始める

耳を育てる最初の一歩は、自分の声を録ることです。

スマホで十分です。歌ったり話したりして、あとから聞き返します。その場で聞く声と、録った声は、ちがって聞こえます。録った声こそ、人に届いている声です。

このずれに気づくことが、耳の出発点になります。

4つの聞くポイント

声を聞くとき、見るところをしぼると、分かりやすくなります。

  1. — 安定して流れているか。ゆれていないか。
  2. 声の出だし — のどを締めて、ぶつけていないか。
  3. 高さ — 音が上がりきっているか。下がりすぎていないか。
  4. 響き — 前に出ているか。こもっていないか。

最初から全部を聞こうとすると、混乱します。ひとつずつ順番に聞くのがコツです。

毎日できる聞く練習

  • 聞きくらべる — お手本の声と、自分の声を続けて聞きます。どこがちがうかを、ひとつ探します。
  • 言葉にする — 「ここで息がもれた」と、声に出して言います。あいまいな印象を、言葉に変える練習です。
  • 数を聞く — 同じフレーズを、毎日少しずつ聞きます。聞いた量が、耳を育てます。

どれも、特別な道具はいりません。続けることが、いちばん効きます。

聞きすぎて疲れたら、休む

耳の練習も、やりすぎはよくありません。

長く集中して聞くと、耳も心も疲れます。すると、ちがいが分からなくなります。そんなときは、いったん休みましょう。

声を出す練習で、のどに痛みや強い不調を感じたときも同じです。むりをせず、専門の機関に相談してください。声と耳を守ることが、先です。

教えるときに役立つこと

聞き分けた耳は、そのままでは生徒さんに伝わりません。

大切なのは、聞き取ったことを言葉に変える力です。「もっと響かせて」だけでは、生徒さんは動けません。「のどの奥を広げて、声を前に」と、具体的に言いかえます。

つまり、教える力は2つで一組です。聞き取る耳と、言葉にする口。この2つがそろうと、指導はぐっと伝わるようになります。

ひとりで耳を育てるのは、むずかしい面もあります。自分の聞き方が合っているか、外からの目があると安心です。独りで抱えこまず、聞き方を見てもらえる場を持つと、上達が早まります。

はじめの一歩

「自分の耳は、教える側に向いているのかな」。そう感じたら、まずは適性診断で、いまの自分に合う学び方を確かめてみてください。

よくある質問

音感がないと、聞き分ける耳は育ちませんか?
大丈夫です。聞き分ける耳は、生まれつきの音感とは別の力です。息・出だし・高さ・響きを、ひとつずつ聞く練習を続ければ伸びます。
どれくらい練習すれば、耳は良くなりますか?
人によります。毎日少しずつ聞くと、数か月で変化を感じる人が多いです。一度にたくさんより、短くても続けることが大切です。
自分の歌が下手でも、人の声は聞き分けられますか?
はい。歌のうまさと、聞き分ける耳は別の力です。聞き取った内容を言葉にして伝えられれば、教える場面で役に立ちます。

参考にした一次情報

  • MUSEION 声楽用語事典(発声生理・共鳴の章)
  • MUSEION 指導者育成プログラムの運営知見