初心者向けレッスンの組み方

やり方ハル監修: 上野目 泰之3

初心者レッスンは、初回から3か月を1枚の設計図にすると迷いません。ゴールの書き方・60分の時間割・1回1テーマのしぼり方を、具体例で紹介します。

結論:初回からの3か月を「設計図」にする

初心者向けレッスンは、その場の思いつきで進めると、毎回ふりだしに戻ります。そこで、初回から3か月先までを1枚の設計図にするのがおすすめです。ゴールを決め、そこから逆算し、1回ごとの中身を置いていく。この順番が、教える側の安心にもつながります。

上手に教えることより、進む道すじを先に用意する。これが土台です。

ゴールは「曲名・場面・期日」で書く

最初の面談で、生徒さんと小さなゴールを決めます。「上手くなる」では、ぼんやりしすぎます。次の3点をうめると、急に具体的になります。

  • 曲名:たとえば「やさしいテンポの1曲」を1つに決める
  • 場面:家族の前で歌う、発表会で歌う、など
  • 期日:3か月後の今日、など

「3か月後に、家族の前でこの1曲を通して歌う」。ここまで書けると、毎回のレッスンが、その地点へ向かう一歩になります。

レッスン1回(60分)の時間割を決める

毎回ちがう流れだと、生徒さんは身がまえます。そこで、時間の配分まで決めておきます。60分なら、こんな割り振りが組みやすいです。

  1. 体ほぐし(5分) — 肩を回し、あくびのように息を吐く
  2. 発声ウォームアップ(15分) — 「ハミング」から「マ・メ・ミ・モ・ム」へ広げる
  3. 今日のテーマ(30分) — 課題曲の一部だけを、ゆっくり練習する
  4. ふり返り(10分) — できたことを伝え、宿題を1つ渡す

分数を決めておくと、話しこんで時間が足りない、という事故が減ります。

「今日のテーマ」は1回1つにしぼる

ここが、初心者向けでいちばん大切なところです。1回で扱うテーマを1つに限ること。

息・姿勢・音程・言葉、一度に伝えると、生徒さんは覚えきれません。「今日は、息をはく長さだけ」と決めます。たとえば、4秒で吐く練習を、テーマ曲の最初の一節にだけ当てはめる。ひとつできた手ごたえが、次回への自信になります。

ほめる言葉は、前回との「差」で伝える

レッスンの最後は、できたことを言葉にします。コツは、前回との差で語ることです。

  • 「先週より、息が1秒長く続きましたね」
  • 「サビの入りが、今日はそろいました」

こう伝えると、生徒さんは自分の伸びを実感できます。直す点は、その後に1つだけ添えれば十分です。

設計図は、指導者の腕の見せどころ

同じ題材でも、ゴールの置き方と時間割の組み方で、伝わり方は変わります。ゴールを3点で書く、60分を割り振る、テーマを1つにしぼる。この3つを相手に合わせて動かせると、レッスンは一人ひとり違う形になります。

声は目に見えません。だからこそ、進む道すじを言葉にできる人が、長く頼られていきます。

のどの不調は、がまんさせない

練習中、生徒さんがのどの痛みや、強い違和感を訴えることがあります。そのときは、レッスンを止めてください。

痛みや声枯れが続くようなら、耳鼻咽喉科など専門の機関への相談をすすめましょう。教える側が「休む判断」を示すことも、信頼につながります。

設計図づくりは、向き不向きが分かれる

レッスンの組み立ては、歌の上手さとは別の力です。人の伸びを設計する作業が、面白いと感じるかどうか。そこに、向き不向きが表れます。自分はどちらだろうと気になったら、適性診断で、いまの自分に合う学び方を確かめてみてください。

よくある質問

初心者には、まず何から教えればいいですか?
最初に「曲名・場面・期日」でゴールを書き、1回のレッスンで扱うテーマを1つにしぼります。たとえば「今日は息をはく長さだけ」と決めると、生徒さんも覚えやすく、ひとつできた手ごたえが次への自信になります。
60分のレッスンは、どう時間を配分すればいいですか?
体ほぐし5分、発声ウォームアップ15分、今日のテーマ30分、ふり返り10分が組みやすい目安です。分数を先に決めておくと、話しこんで時間が足りなくなる事故が減ります。
自分がうまく歌えなくても、レッスンは組めますか?
歌の上手さと、進む道すじを設計する力は別ものです。ゴールを3点で書く、時間を割り振る、テーマを1つにしぼる。この組み立ては、学んで身につけられます。

参考にした一次情報

  • MUSEION 指導者育成プログラムの運営知見