音楽のキャリアを途中で変える

体験談みち監修: 上野目 泰之8

音楽の道を途中で組み替えても、声の土台「発声」は持ち越せます。戻る人がたどる3ステップと、版権切れの教材から始める理由を、ある一人の例でたどります。

結論:道を選び直しても、声の土台は持ち越せる

音楽の仕事を途中で組み替えても、これまでの練習はむだになりません。歌う側でも、教える側でも、共通の土台は「発声」だからです。土台は一度きずけば、別の道の上にそのまま乗せ直せます。

30代でもう一度、声に戻った人の例

ここで、ある一人の歩みを紹介します。とくべつな才能の話ではありません。

その人は20代でステージを夢見ていました。けれど思うように見通しが立たず、いったん音楽から はなれます。30代で「もう一度、声に関わりたい」と思い直しました。

不安はありました。「ブランクがあるのに、いまさら」。多くの人が同じ場所でつまずきます。

戻る人がたどる、最初の3ステップ

その人が踏んだ順番は、まねしやすいものでした。目安として段階を分けておきます。

  • 第1段階(最初の2週間) 息の出し入れと、肩や あごの力を ぬくことだけに しぼる
  • 第2段階(1〜2か月) まっすぐな音を1音ずつ確かめ、コンコーネ50番の前半をゆっくり通す
  • 第3段階(3か月め以降) 短い1曲を選び、人に聞いてもらう場をつくる

はなやかな曲から入らないのが、つまずきにくいコツです。土台がゆるいまま上を積むと、のどに負担が残ります。

なぜ「版権の切れた曲」から始めるのか

戻る時期の教材には、版権の切れた古い練習曲が向いています。費用がかからず、配布や録音も気がねなく できるからです。

  • コンコーネ50番 音階と息をならす定番です
  • ヴァッカイの実用声楽教本 歌い方の基礎を1曲ずつ学べます
  • 滝廉太郎の歌曲 日本語で歌い慣れる入口になります

いずれも作曲者の没後に長い年月がたち、だれでも自由に使えます。教える側に回ったとき、この「自由に配れる教材」の手持ちが効いてきます。

「歌う」以外にも入口は分かれている

声を出し直すうちに、その人は道が一つではないと気づきます。

  • 物語を声で届ける、朗読の場
  • 言葉をはっきり伝える、話し方の支え
  • 歌う楽しさを人と分かち合う、場づくり

どれも入口は同じ発声です。だから、後からでも選び直せます。

教える側を選ぶなら、磨く力は2つ

教える道は、声に関わる人が多く選ぶ進み方です。年を重ねた経験は、ここでは弱みになりません。つまずいた記憶がある人ほど、つまずく相手の気持ちを言葉にできます。

教えるとき、とくに役立つのは次の2つです。

  • 聞き取る力 生徒さんの声の、どこに課題があるかを見つける
  • 言いかえる力 「もっと響かせて」を、息や姿勢の手順に直して伝える

どちらも生まれつきではなく、練習でのびる力です。

のどに違和感を感じたら、無理をしない

声を出し直す時期は、のどを痛めやすい時期でもあります。声がかれる、痛みが続く、高い音だけ出ない——。こうした合図が出たら、がまんしないでください。

痛みや強い違和感が続くときは、耳鼻咽喉科や音声の専門外来へ確認を。 早めに診てもらうことも、声を長く保つ力のひとつです。

どの道が合うかは、ひとりで決めなくていい

これは特別な成功談ではありません。「こうすればできるだけこうなる」と約束するものでもありません。

ただ、道を組み替えて声に戻った人は、たしかにいます。その人たちの最初の一歩も、小さなものでした。

あなたに合う入口が、歌う側か教える側か、朗読や話し方かは、頭の中だけでは見えにくいものです。まずはセルフチェックで、いまの気持ちと声の好みを書き出すところから始めてみてください。次の一歩が、少し具体的になります。

答えを急がなくていい理由

私の入口は、いつも特別な舞台だったわけではありません。入口は小学校の合唱と、家にあった古いキーボード。高校で声楽を学び始め、音楽大学進学を考えた時期があります。音楽を学んだあと、事務職や制作補助など演奏以外の仕事も経験。離れた時間を経て、音楽との距離を作り直すテーマを持つようになりました。ここで書くときも、読者が自分の足元から考えられる順番を大切にします。

音楽や声との関わり方は、仕事にするか、趣味に戻すかの二択だけではありません。

地域文化施設で出会う人たちは、プロになるためだけに音楽へ戻ってくるわけではありません。その姿を見ると、音楽との関わり方はもっと柔らかくていいと思います。

「音楽のキャリアを途中で変える」も、いきなり結論から入ると少し遠い話になります。私は、読者が今日の自分に引き寄せて考えられる言葉から置いていきたいです。だから私は、急いで戻らなくていい、と言える文章にしたいです。

音楽との距離を測り直す

日本歌曲、リート、静かな映画音楽。強い成功物語より、人生の途中で何度も聴き直せる曲に惹かれます。その聞き方が、私の中では「生き方」の見方にもつながっています。リズムは大きく揺れるテンポ・ルバートに惹かれます。決めた拍に乗るより、言葉と呼吸で少し伸び縮みする音楽が好きです。声は白黒で判定するより、動いたところを拾うほうが続きます。

「キャリアチェンジ」は、技術の名前だけで見ると少し固くなります。けれど実際には、声を出す場面、聞いている相手、続けられる練習量で必要な答えが変わります。私は、その揺れを悪いものとして扱わず、進み方を決める材料にしたいです。

昔の自分と比べるとき

私が「音楽のキャリアを途中で変える」を考えるとき、最初に思い浮かべるのは大きな成功例ではありません。「昔の楽譜を開く」のような、手触りのある小さな場面です。「生き方」という言葉は知識として覚えるだけだと遠くなりますが、日常の動きに戻すと、急に自分の問題として見えやすくなります。

ここで難しいのは、知識を足せば足すほど安心できるとは限らないことです。練習名や仕事名を知っても、今の自分に合うかは別の問題です。

だから私は、「昔の楽譜を開く」のように、すぐ確かめられることを一つ置きます。小さく試して残った感覚のほうが、次の判断に使いやすいからです。

関わり方を一つにしない

迷ったときは、結論より順番を決めます。私なら、まず「体で確かめる」「人に聞く」「まだ置いておく」に分けます。

  • 体で確かめること
  • 人に聞くこと
  • まだ置いておくこと

「生き方」に関する不安も、「キャリアチェンジ」に関する不安も、同じ日に全部解決しなくて大丈夫です。分けるだけで、次の一手が少し静かになります。

諦めるか続けるかの二択ではなく、今の生活に合う距離を探す視点を大切にしています。

今の生活に置いてみる

今日できることは、いまの生活で声や音楽に使える時間を、理想ではなく現実の数字で見ることです。

おすすめは、三行だけ書くことです。一行目に気になること、二行目に不安、三行目に今日の行動。「生き方」も「キャリアチェンジ」も、この大きさまで下げると急に扱いやすくなります。

できそうなら「今週使える時間を書き出す」まで試してください。変化が小さくても、その小ささを残しておくことが次の手がかりになります。

迷いも手がかりにする

誰かの相談を受ける立場になったとき、自分の遠回りや迷いも、同じ場所で立ち止まる人への手がかりになります。

「生き方」を人に伝える場面では、知っていることを全部話すより、相手が次に試せる形まで小さくするほうが届きます。

一度で変えようとしない。できた瞬間を見逃さない。違和感があるなら止まる。この三つを持っているだけでも、教える言葉はずいぶん落ち着きます。

声との距離を作り直す

離れた時間があったからこそ、もう一度戻る人のためらいを急かしたくないと思っています。

だから、私は「音楽のキャリアを途中で変える」を読んだあとに、すぐ結論へ飛ばなくてもいいと思っています。今の自分に一番近かった言葉、まだ不安が残るところ、今日なら試せる小さな行動。この三つだけ残れば、次の一歩には十分です。

声と音楽を続ける道は、一度離れた経験も含めて作り直せます。

声の学びは一度で変わるものではありません。録音を聞き返した日、誰かに説明してみた日、うまくいかずに立ち止まった日。その積み重ねが、あとから自分の言葉になります。

声診断に渡す前のメモ

声診断へ進む前に、この記事で残ったことを三つだけメモしておくのもおすすめです。「気になった言葉」「まだ不安なこと」「今日ならできること」。この三つがあると、LINEで診断を受けたあとに結果を自分の生活へ戻しやすくなります。

「生き方」も「キャリアチェンジ」も、すぐに正解を選ばなくて大丈夫です。声の仕事や学び方は、今の生活、使える時間、届けたい相手によって形が変わります。

私がここで促したいのは、勢いで決めることではありません。声診断を、いまの現在地を見つけるための小さな確認として使うことです。

この記事は参考になりましたか?

記事改善のための参考スコアとして記録します。

よくある質問

ブランクがあっても、また声に関わる仕事はできますか?
はい、できます。まず最初の2週間は息の出し入れと脱力だけにしぼり、次にコンコーネ50番の前半をゆっくり通すと、これまでの経験を土台として生かせます。あせらず段階を分けて進めば大丈夫です。
戻るとき、何から練習すればよいですか?
はなやかな曲ではなく、基本の発声からです。息と脱力、まっすぐな1音の確認、短い1曲を人に聞いてもらう、の順がつまずきにくいです。コンコーネやヴァッカイなど版権の切れた練習曲が向いています。
教える道は、歌うのをやめた人でも選べますか?
選べます。声に関わる人が多く選ぶ進み方で、つまずいた経験はむしろ強みになります。役立つのは聞き取る力と、感覚を手順に言いかえる力で、どちらも練習でのびます。

参考にした一次情報

  • コンコーネ『50の練習曲 op.9』(Giuseppe Concone, 1801-1861) — 作曲者の没後70年以上が経過したパブリックドメイン楽曲
  • ヴァッカイ『実用声楽教本』(Nicola Vaccai, 1790-1848) — パブリックドメイン楽曲
  • 滝廉太郎 歌曲(1879-1903) — 没後70年以上が経過したパブリックドメイン楽曲
  • シューベルト 歌曲(Franz Schubert, 1797-1828) — パブリックドメイン楽曲

次に進む3つの入口

読み終えたあと、迷わず動けるように

Cookieとアクセス解析の設定

サイト改善のために、Google Analytics、Meta Pixel、Microsoft Clarityを使う場合があります。 必須ではない計測は同意後だけ有効になります。