結論:歌の母音は「口の中の形」で決まります
歌の声を作るとき、母音はとても大切です。「あ・い・う・え・お」のちがいは、口の中の形のちがいから生まれます。同じ高さの声でも、形を変えれば母音が変わります。
つまり、母音をそろえる力は、声を整える力そのものです。
どうして口の形で母音が変わるの
声のもとは、のどの奥にあるひだのふるえです。そのふるえだけでは、まだ母音になりません。声が口の中を通るとき、形に合わせて音の色がつきます。これで母音が決まります。
口の中には、よく響く高さがいくつかあります。これを「響きの山」と呼びます。むずかしい言葉では「フォルマント」と言います。この山の場所が、母音を聞き分ける手がかりです。
山の場所を変えるのは、おもに次の3つです。
- あごの開き … 大きく開けると「あ」に近づく
- 舌の前後 … 舌を前に出すと「い」に近づく
- くちびるの形 … 丸めると「う」や「お」に近づく
5つの母音の形を、ひとつずつ
5つの母音は、開きと舌とくちびるの組み合わせでできています。形を言葉にすると、こうなります。
- あ … 口を大きく開ける。舌は低い位置
- い … 口は少しせまい。舌を前に上げる
- う … くちびるを丸めてすぼめる。舌は後ろ
- え … 「あ」と「い」の中間くらいの開き
- お … くちびるを丸める。「あ」より口はせまい
ポイントは、開きとくちびるをべつべつに動かせることです。母音は「あごの上下」と「舌の前後」という、2つのものさしの上にならびます。ここがわかると、母音の地図が頭に入ります。
高い声では母音が少し変わります
高い声になると、母音はそのままの形では出しにくくなります。声が高くなるほど、ひとつめの「響きの山」が声の高さに近づくからです。
そこでベテランの歌い手は、高い音で母音を少しだけ寄せます。たとえば「あ」を「お」に近づけます。これで響きが合い、声が楽に出ます。これは正しいやり方のひとつで、まちがいではありません。
教えるときに役立つこと
母音の指導では、「のどをこうして」とは言いにくいものです。のどの中は見えないからです。代わりに、見える場所で伝えると届きます。
- 「あごをもう少し下げよう」 … 開きを変える言葉
- 「舌を前に出してみよう」 … 「い」に近づける言葉
- 「くちびるを丸めて」 … 「う・お」に近づける言葉
このように、母音を3つの動きに分けて伝えます。生徒は自分で形を作れるようになります。鏡を使うと、もっとわかりやすくなります。
母音がそろわないとき、原因を「開き」「舌」「くちびる」のどれかにしぼれます。これが見立ての第一歩です。
なお、声を出すと痛みが出る、声がかすれて戻らない。そんなときは無理をせず、専門の医療機関に相談してください。
自分の伝え方を確かめてみましょう
母音の話は、声を教えるための土台です。この土台を、あなたはどんな言葉で伝えるのが向いているでしょうか。まずは適性診断で、自分の強みを確かめてみてください。
よくある質問
- 母音は5つだけですか。
- 日本語の歌では、まず「あ・い・う・え・お」の5つが基本です。この5つの形を整えるだけで、声はぐっと聞きやすくなります。外国語の歌には、ほかの母音も出てきます。
- 母音をきれいにそろえるコツはありますか。
- 口を動かす場所を「あごの開き」「舌の前後」「くちびるの形」の3つに分けて考えると、整えやすくなります。鏡で自分の口を見ながら練習すると、ちがいに気づきやすいです。
- 高い声で母音が変わって聞こえるのはなぜですか。
- 声が高くなると、もとの母音の形では響きが合いにくくなるからです。そのため少し形を寄せて歌うことがあります。これは自然なことで、まちがいではありません。
参考にした一次情報
- MUSEION 声楽用語事典(発音(母音)の章)

