日本語歌唱はなぜ難しい?

解説カンタ監修: 上野目 泰之9

日本語の歌は「のばす音・つまる音・はねる音」が声のながれをじゃまするためむずかしく感じます。しくみと、きれいに歌う3ステップをやさしく説明します。

日本語の歌は「のばす音」と「つまる音」が多く、ことばと声をきれいにつなぐのがむずかしいのです

日本語の歌がむずかしいのには、はっきりした理由があります。母音(あ・い・う・え・お、のばす音のもと)が5つと少なく、ひとつずつをきれいに出す必要があります。さらに「のばす音」と「つまる音」が多く、声をなめらかにつなぐのがむずかしいのです。でも、しくみがわかれば、ひとつずつ練習できます。

なぜむずかしいのか、しくみを見てみよう

歌いやすい言語の代表はイタリア語です。イタリア語はことばのおわりが母音になることがとても多く、声が自然にのびます。

日本語も母音でおわる音が多いので、本当はのびやすい言語です。それなのにむずかしく感じるのは、つぎの3つの音があるからです。

  • のばす音(ちょうおん): 「おかあさん」の「かあ」のように、母音を2はく分のばす音です。
  • つまる音(そくおん): 「きって」の「っ」のように、音を1はく分とめる音です。
  • はねる音(はつおん): 「ほん」の「ん」のように、鼻にぬける音です。

この3つは、ふつうに話すときは気になりません。でも歌になると、声のながれをじゃまします。だから日本語の歌はむずかしく感じるのです。

具体れい:3つの音をどうあつかうか

のばす音は、口の形を最後まで変えないことが大事です。「あー」とのばすとき、とちゅうで舌が動くと音がゆれます。同じ形のまま、しずかにのばしましょう。

つまる音は、のどをしめないことが大事です。「っ」は声をとめる音です。このとき、のどに力を入れてとめる人が多いです。でもそれは声に負担がかかります。かわりに、舌やくちびるの形を一しゅんとめて表します。

はねる音は、長くしすぎないことが大事です。「ん」は鼻にぬける音です。「ん」が長すぎると、まわりの母音まで鼻にぬけて、音がにごります。

手順:きれいに歌うための3ステップ

  1. ゆっくり読む: まず歌詞を、メロディなしでゆっくり声に出します。のばす音・つまる音・はねる音の場所をたしかめます。
  2. 母音だけで歌う: 子音(かしらの音)を取り、母音だけでメロディを歌います。声のながれを先につくります。
  3. 子音をおそく入れる: 子音は、つぎの母音にできるだけ近づけて、おそめに入れます。こうすると母音が長くのび、声がなめらかにつながります。

このやり方は、プロもよく使う「子音をおくらせる」という考え方です。むずかしい曲ほど、この手順が役に立ちます。

教えるときに役立つこと

人に教えるときは、「のどでとめない」を何より先に伝えてください。つまる音やはねる音で、のどに力が入る人はとても多いからです。

伝え方のこつは、声ではなく口の形で説明することです。たとえば「『っ』は声でとめるのではなく、舌でとめる」と言うと伝わりやすいです。

高い音が苦しいときは、母音の形を少しだけ変える方法も教えられます。たとえば高い「ア」を、ほんの少し「オ」に近づけると、声が楽になります。聞いている人には変わったと気づかれません。

もし生徒がのどの痛みや強い違和感をうったえたら、無理に続けさせないでください。痛みや強い違和感があるときは、医療の専門きかんへの確認をすすめましょう。これは指導者の大切な役わりです。

教えることは、「うまく歌わせる」ことだけではありません。声を守りながら、できることを少しずつ増やす手だすけです。

日本語の歌のむずかしさは、正しい順番で練習すれば、ひとつずつ越えられます。声を教える仕事に向いているか、まずはセルフチェックで確かめてみてください。きっと、これからの学びの地図になります。

声の違和感があるときの線引き

声の痛み、声がれ、強い違和感が続く場合は、練習を止め、耳鼻咽喉科などの医療機関を受診してください。ここでの内容は、診断や治療を目的にしたものではなく、日々の学び方を整理するための読みものです。

声を体の中で見る

僕の入口は、いつも特別な舞台だったわけではありません。小学校の合唱祭で、クラス全員の声が一瞬そろった感覚に強く惹かれました。中学から合唱部に入り、声を重ねる面白さを知りました。地域合唱団と大学合唱でテノールパートを担当。パートリーダーとして、音取りが苦手な人に楽譜の読み方を説明する経験を積みました。ここで書くときも、読者が自分の足元から考えられる順番を大切にします。

発声の話は、専門語が増えるほど自分の体から遠く感じられることがあります。

合唱団の同期と演奏会を聴きに行くと、主旋律より内声の支え方を話してしまいます。声の仕事を見るときも、目立つ声だけでなく支える声を大切にしたいです。

「日本語歌唱はなぜ難しい」も、いきなり結論から入ると少し遠い話になります。僕は、読者が今日の自分に引き寄せて考えられる言葉から置いていきたいです。断定で押すより、隣の音を聞くように、少しずつ確かめる書き方を大切にしています。

音楽の聞き方と発声

日本語の合唱曲、宗教曲、シンプルなカノン。旋律だけでなく、内声がじわっと支える曲に惹かれます。その聞き方が、僕の中では「日本語歌唱」の見方にもつながっています。拍を強く押すより、言葉の子音が拍の少し前に触れる感覚を大切にします。三拍子では二拍目を急がないことをよく見ます。声は白黒で判定するより、動いたところを拾うほうが続きます。

同じ「発声」でも、歌う人、話す人、教える人、運営する人では見える景色が変わります。僕はその違いを、向き不向きの一言で終わらせたくありません。声の高さ、言葉の置き方、リズムへの乗り方、安心する響き。その人が自然に選んできたものの中に、次に伸ばせる方向が残っています。

うまくいかない日の見方

僕が「日本語歌唱はなぜ難しい」を考えるとき、最初に戻るのは専門語ではなく、短い録音や鏡の前の一息です。「和音が少し合った瞬間を覚える」のような小さな確認を挟むと、「日本語歌唱」というテーマが体の反応として見えやすくなります。

調べ始めると、正しい方法、避けたほうがよい方法、経験者の意見が一度に出てきます。どれも大事に見えるので、最初の一歩が重くなります。

そんなとき、僕は「和音が少し合った瞬間を覚える」くらいの小さな確認まで戻します。大きな問題として抱える前に、一回の録音、一文の読み方、次の予約の声かけのように切り出す。そこまで小さくすると、今日扱える範囲が見えてきます。

今扱える範囲を決める

迷ったときは、結論より順番を決めます。僕なら、まず「体で確かめる」「人に聞く」「まだ置いておく」に分けます。

  • 体で確かめること
  • 人に聞くこと
  • まだ置いておくこと

「日本語歌唱」に関する不安も、「発声」に関する不安も、同じ日に全部解決しなくて大丈夫です。分けるだけで、次の一手が少し静かになります。

ひとりで抱え込まず、周りの音や相手の反応から学べる形を意識しています。

一文だけ録ってみる

今日できることは、長く練習することではなく、短い録音を残して、楽だった瞬間と力んだ瞬間を分けて聞くことです。

今日の確認は、短くて大丈夫です。「日本語歌唱で気になった言葉」「発声で引っかかったところ」「次に試す一つ」をメモに残してください。

そのあとで「隣のパートの息を聞く」を一度だけ入れると、頭で考えたことと体の反応を比べやすくなります。長く頑張るより、あとで読み返せる形にするほうが役に立つ日があります。

説明より先に観察する

誰かに説明するときは、感覚の言葉と体のしくみをつなぐ翻訳が必要になります。

もし将来、あなたが誰かに声を教えるなら、「日本語歌唱」というテーマは自分だけの知識では終わりません。相手が同じところで迷ったときに、どう言葉を置くか。その練習にもなります。

教える人に必要なのは、完璧な答えをすぐ出すことだけではありません。相手の声を聞き、今どこで止まっているのかを一緒に見つけることです。自分が迷った経験を覚えている人ほど、その確認が丁寧になります。

無理なく続けるために

楽譜に鉛筆で小さく書き込んだ注意が、次の練習で急に効いてくる感覚を何度も経験しました。

「日本語歌唱はなぜ難しい」に答えを出す前に、今の自分がどこで反応したかを残しておいてください。読みながら少し安心したところ、逆に不安が強くなったところ、あとで誰かに聞きたいところ。そのメモが次の入口になります。

声は体の一部なので、痛みや強い違和感があれば練習を止め、専門機関に確認する前提も忘れないでください。

声や音楽の道は、きれいな直線だけでは進みません。立ち止まった日も、あとから見れば必要な確認だったとわかることがあります。

声診断に渡す前のメモ

ここまで読んで、「自分の場合はどこから考えればいいのだろう」と感じたら、LINEの声診断で一度整理してみてください。声診断は、正解を決めつけるためのものではありません。今の声の悩み、興味のある働き方、学びに使える時間を分けて、自分に合う入口を見つけるための確認です。

僕が読者に持って帰ってほしいのは、焦りではなく、次に試す一つの行動です。「日本語歌唱」が気になるなら、その理由を一文で残す。「発声」に不安があるなら、誰に相談できそうかを書いておく。声診断に進む前にそれだけでもメモしておくと、結果を見たときに自分の感覚と照らし合わせやすくなります。

声の仕事も、声の学びも、入口は一つではありません。遠回りに見える時間の中に、その人らしい強みが残っていることがあります。今の自分の声をどう扱いたいのか、どんな人に届けたいのか。そこから静かに考え始めることが、長く続く道につながります。

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よくある質問

日本語は母音が少ないのに、なぜ歌がむずかしいのですか?
母音は5つと少なく、ひとつずつをきれいに出せます。でも「のばす音」「つまる音」「はねる音」が多く、声をなめらかにつなぐのがむずかしいからです。
「っ」(つまる音)を歌うコツは何ですか?
のどに力を入れてとめないことです。声でとめると負担がかかります。かわりに舌やくちびるの形を一しゅんとめて表すと、声を守れます。
歌っていてのどが痛いときはどうすればよいですか?
無理に続けないでください。痛みや強い違和感があるときは、医療の専門きかんへ確認しましょう。指導者は、生徒にもこのことをできるだけ伝えてください。

参考にした一次情報

  • MUSEION 声楽用語事典(発音(日本語)の章)

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