頭声と胸声のちがい|使い分けの基本

解説ケン監修: 上野目 泰之3

頭声と胸声は声帯の使い方がちがう「声の種類」。境目をなめらかにつなぐのが上達の目標で、教えるときのコツも紹介します。

まず結論。頭声と胸声は、声帯ののどの使い方がちがう「声の種類」です。境目をなめらかにつなぐことが、上達の目標になります。

声には、低い音を出すときと高い音を出すときで、声帯の働き方が変わるしくみがあります。この使い方のちがいを「声区(せいく)」と呼びます。頭声と胸声は、その代表的な2つです。

胸声(きょうせい)とは

胸声は、ふだんの話し声に近い、低めから中くらいの音です。声帯が厚いまま、しっかり振動します。

  • 力強く、はっきりした音になる
  • 胸のあたりが響く感じがする
  • 話し声やロック、ソウルの土台になる

胸声は、すべての声のもとになる大事な土台です。

頭声(とうせい)とは

頭声は、高めの音で使う声です。声帯がうすく引きのばされて、ふちだけが小さく振動します。

  • 明るくて、ぬけのよい音になる
  • 頭のてっぺんや後ろが響く感じがする
  • のどへの負担が小さく、長く歌いやすい

「頭に響く」のは、本当に頭で音が大きくなるのではなく、骨が振動して感じる感覚です。

境目で「ひっくり返る」のはなぜ

胸声と頭声の間には、声が切りかわる場所があります。これを「換声点(かんせいてん)」と呼びます。

ここで急に使い方が変わると、声が「裏返る」「とぎれる」感じが出ます。練習をしていない人ほど、この段差が大きくなります。

目標は、この境目をゆっくりつなぎ、聞いている人に切れ目を感じさせないことです。

使い分けの基本

  • 低い音は胸声、高い音は頭声、と決めつけない
  • 境目の音を、強めの胸声で無理に引っぱらない
  • 「うー」「おー」など口をすぼめた母音で、低い音から高い音へすべるように動かす
  • 少しずつ、毎日短く練習する

無理に強い高音を続けると、のどに負担がかかります。痛みや強い不調があれば、専門機関へ相談してください。

教えるときに役立つこと

換声点の場所は、人によって大きくちがいます。同じ声の高さでも、数音ぶんずれることがあります。

だからこそ、教えるときは「この音から頭声に変えなさい」と一律に決めない方が安全です。まず生徒の声をよく聞き、その人の境目を見つけてあげましょう。

そのうえで、境目の前後だけを軽く、ていねいに練習します。叱るのではなく、「いまの感覚が近いよ」と声をかけると、生徒は段差を越えやすくなります。

頭声と胸声のしくみを言葉で説明できると、生徒の「なぜ裏返るの」という不安にもこたえられます。

声を教える人に向いているかは、まず適性診断で確かめてみてください。あなたの強みや、これから学ぶとよいことが見えてきます。

よくある質問

頭声と胸声、どちらが良い声なのですか。
どちらが上ということはありません。低めの音は胸声、高めの音は頭声が向いていて、両方を使えることが大切です。場面に合わせて選べるようにしていきます。
高い音で声が裏返ってしまいます。直せますか。
はい、練習で少しずつなめらかにできます。声が切りかわる「換声点」の前後を、口をすぼめた『うー』などで軽く行き来する練習が役立ちます。痛みや強い不調があれば専門機関へ相談してください。
ミックスボイスは頭声や胸声とちがうものですか。
ミックスボイスは、胸声と頭声を混ぜた中間の声です。境目をなめらかにつなぐと、結果としてこの混ざった状態に近づきます。まずは頭声と胸声のちがいを知ることが入り口になります。

参考にした一次情報

  • MUSEION 声楽用語事典(声区(頭声・胸声)の章)