腹式呼吸の本当のやり方
腹式呼吸は「おなかをふくらませる」のではなく、横かくまくが下がった結果ふくらむ呼吸。正しいしくみと3ステップ、教えるコツをやさしく解説します。

まず結論:腹式呼吸は「おなかをふくらませる」ではなく、横かくまく(肺の下のまく)が下がった結果、おなかがふくらむ呼吸です
「おなかに力を入れる」ではありません。息を深く吸うと、肺の下にあるドーム型のまく(横かくまく)が下にさがります。すると内ぞうが少し下へおされ、その動きでおなかが自然に前へふくらみます。つまり、ふくらませるのではなく、ふくらむのです。ここをまちがえると、おなかに力を入れすぎて、のどがかたくなってしまいます。
なぜ大事なのか:声の「エンジン」だから
声は、はいた息が声帯をふるわせて生まれます。だから息の出し方は、声そのものを左右します。深い呼吸ができると、長いフレーズも、ゆれない声も出しやすくなります。
逆に、かたが上下する浅い呼吸は注意が必要です。これは「胸式」や「鎖こつ式」とよばれます。
- かたや首に力が入りやすい
- すぐにつかれてしまう
- のどがしまって、声がかたくなる
だから多くの先生は、深い呼吸へ少しずつ案内します。
しくみを一文で:横かくまくは「下がって平ら」になる
よくある思いちがいがあります。「横かくまくが上下に動く」というイメージです。本当は、ドーム型から平らな形へ変わります。
この正しいイメージを持つと、おなかが動く理由がすっきりわかります。重力(下へひっぱる力)も手伝うので、あおむけだと自然におなかがふくらみます。
やってみる手順:3ステップ
まず、楽な気もちで始めてください。むずかしく考えなくて大丈夫です。
- あおむけにねる。 床やベッドにあおむけになります。ひざは軽く立てると楽です。
- 手をおなかに置く。 息を吸うと、手が少し持ち上がるのを感じます。これが目印です。
- ゆっくりはく。 6〜8びょうかけて、細く長くはきます。かたは動かさないようにします。
なれてきたら、すわった姿せい、立った姿せいへと進めます。
補助の練習:リップトリル
くちびるを「ぷるるる」とふるわせながら声を出す練習があります。これを「リップトリル」とよびます。
これは息と声をつなぐ感かくをつかむのに向いています。声帯への負たんも少なく、安全に毎日できます。くちびるがふるえにくい時は、指で口の横を軽く支えると出しやすくなります。
教えるときに役立つこと
生徒さんに教える時は、「目で見える・手でさわれる」しるしを使うと伝わりやすいです。
- 言いかえを用意する。 「おなかに息を入れる」と言うと混らんします。「ねた時に自然にふくらむ」と説明しましょう。
- あおむけから始める。 立ったままより、ねた姿せいの方が感かくをつかみやすいです。
- 人によってちがう。 体つきはひとりひとりちがいます。同じやり方を全員におしつけないことが大切です。
- 力みを直す。 かたが上がっていたら、まずそこをゆるめます。
腹式呼吸は、それ自体がゴールではありません。深い呼吸は、しっかりした「支え」へ進むための入り口です。この順番を伝えると、生徒さんは安心して学べます。
なお、健康についてひとこと。練習はあくまで「学び」として行ってください。むねの痛みや強い息ぐるしさなど、強い不調があれば、無理せず専門機関へ相談してください。
声を教える仕事に向いているか気になった方は、ぜひ適性しんだんで確かめてみてください。あなたの「教える力」を、やさしく見える形にしてくれます。
よくある質問
- 腹式呼吸は、おなかに力を入れることですか?
- ちがいます。息を深く吸うと横かくまく(肺の下のまく)が下がり、その動きでおなかが自然にふくらみます。力を入れるのではなく、ふくらむのが正しい形です。力を入れすぎると、のどがかたくなります。
- うまくできているか、どうやって分かりますか?
- あおむけにねて、手をおなかに置いてみてください。息を吸った時に手が少し持ち上がれば、深い呼吸ができています。かたが上下していたら、まだ浅い呼吸かもしれません。
- 練習で苦しくなったら、どうすればいいですか?
- 無理は禁物です。一度ふつうの呼吸にもどして休んでください。むねの痛みや強い息ぐるしさなど、強い不調が続く時は、自分で判断せず専門機関へ相談してください。
参考にした一次情報
- MUSEION 声楽用語事典(呼吸(腹式)の章)
