役に立つフィードバックの伝え方

やり方ハル監修: 上野目 泰之3

声を教えるとき、相手が次に動けるフィードバックを伝えるための、やさしい3つの順番とコツをまとめました。

役に立つフィードバックとは「相手が次に何をすればいいか分かる一言」です

良いフィードバックの正体はシンプルです。それは、ほめ言葉でも、ダメ出しでもありません。「次に何をすればいいか」が相手に分かる一言です。これを覚えておくと、伝え方の迷いがぐっと減ります。

まず「良い・悪い」より「どう変わったか」を伝える

人は「ダメ」と言われると、心を閉じてしまいます。だから、まず事実を伝えます。

  • 悪い例: 「今の声、ダメだね」
  • 良い例: 「さっきより、声の出だしが少しかたく聞こえたよ」

「ダメ」は評価です。聞いた人は落ち込むだけで、動けません。一方「かたく聞こえた」は、ただの事実です。相手は「やわらかくすればいいんだ」と次の一歩を思いつけます。

3つの順番で伝えると、すっと届く

伝える順番には、おすすめの形があります。次の3つです。

  1. できている所を1つ言う(例: 息がよく続いていたね)
  2. 変えるとよい所を1つだけ言う(例: 出だしだけ、もう少しゆっくり)
  3. 次の行動を具体的に言う(例: 鼻から息を吸ってから歌ってみよう)

ポイントは、直す所を「1回に1つだけ」にすることです。一度に3つも4つも言うと、相手はどれから手をつけるか分からなくなります。1つなら、必ず試せます。

「あなた」より「声」を主語にする

伝え方をやわらかくするコツがあります。それは、相手ではなく、声や動きを主語にすることです。

  • やわらかい: 「この音は、もう少し低めが合いそう」
  • きつい: 「あなたは音をはずしている」

声を主語にすると、相手は責められた気がしません。問題と人を切り分けるのです。これだけで、相手は素直に受け取りやすくなります。

体の話は「気持ちよさ」を基準にする

のどや息の話をするときは、無理をさせないことが何より大切です。「もっと頑張って」より、「楽に出る感じを探そう」と伝えます。

もし相手が、歌っていて痛みや強い不調を感じているようなら、練習を止めてください。そして「痛みや強い不調があれば、専門機関へ相談してね」と伝えましょう。あなたは医療の人ではありません。声の出し方は教えられますが、体の診断はしません。この線引きが、相手を守ります。

教えるときに役立つこと

声を教える道に進むなら、この「フィードバックの伝え方」はそのまま武器になります。教える力とは、難しい知識の量ではありません。相手が一人でも練習を続けられる言葉を、どれだけ渡せるかです。

国家資格がなくても、教える力は学んで身につけられます。最初は、家族や友だちの歌を1曲聞いて、「できている所1つ」と「次の一歩1つ」だけ伝える練習から始めてみてください。短い言葉でも、相手が笑顔で次に進めたら、それが役に立ったフィードバックです。一人で抱え込まず、仲間と練習し合うのもよい学びになります。

伝え方は、生まれつきの才能ではなく、練習で伸びる技術です。自分がどんな伝え方に向いているか、まずは適性診断で確かめてみてください。

よくある質問

ほめるのと直すの、どちらを先に言えばいいですか?
まず「できている所」を1つほめてから、「変えるとよい所」を1つ伝えます。先にほめると相手の心が開き、その後の助言を素直に受け取りやすくなります。
一度にたくさん直したい時はどうすればいいですか?
気になる所が多くても、1回につき1つだけ伝えます。一度に多くを言うと相手はどれから直すか迷い、結局どれも進みません。1つずつなら必ず試せます。
相手がのどの痛みを訴えたら、どう声をかければいいですか?
まず練習を止めます。そして「痛みや強い不調があれば、専門機関へ相談してね」と伝えてください。声の出し方は教えられますが、体の診断は専門家の役目です。