歌のレコーディングに参加する仕事

解説ハル監修: 上野目 泰之3

歌の録音に参加する仕事を、初めての人にもわかるように紹介します。どの役わりも土台は発声で、版権切れの曲で練習を始められます。

結論:録音の仕事でも、土台になるのは「ととのった発声」です

歌の録音に参加する仕事があります。マイクの前で歌い、作品の声を録(と)る仕事です。きらびやかに見えますが、土台はふだんの発声です。安定した声があってこそ、何度でも同じように歌えます。

録音に参加する声には、どんな役わりがある?

歌の録音には、いろいろな声が集まります。おもな役わりはこちらです。

  • メインを歌う声 — 曲の中心になる歌です。
  • ハモる声(コーラス) — メインに重ねて、ふくらみを出します。
  • 仮歌(かりうた) — 作品が完成する前に、お手本として入れる声です。
  • 児童合唱や少人数の合唱 — 大勢で、一つの響きを作ります。

どの役わりも、作品を支える大切な仕事です。はなやかな主役だけが、録音の現場ではありません。

録音の現場で求められること

録音は、生(なま)の舞台とは少しちがいます。求められる力も変わります。

まず、同じ声を何度も出せることです。録音は、気に入る一回が録れるまでくり返します。一回ごとに声がぶれると、つなぎ合わせたときに目立ちます。

次に、マイクとの距離をたもつことです。近づくと音が割れ、はなれると小さくなります。一定の場所で歌う体の支えがいります。

そして、指示をすぐ反映できることです。「もう少しやわらかく」と言われ、その場で変える。これも、発声を分かっているからできます。

つまり、土台はやはり発声です。基礎ができていれば、現場の細かい注文にこたえやすくなります。

まずはパブリックドメインの曲で練習を

いきなり仕事を探す前に、家で録音の練習ができます。おすすめは、版権(はんけん)が切れた曲です。これを「パブリックドメイン」と呼びます。作った人が亡(な)くなって長い年月がたち、だれでも自由に使える曲のことです。

たとえば、こんな曲があります。

  • 滝廉太郎(たき れんたろう)の童謡 — 「花」や「荒城の月」など、日本の名曲です。
  • シューベルトの歌曲 — やさしいメロディーで、声の練習に向きます。
  • 古い合唱曲 — 重なる声の感覚を、つかむのに役立ちます。

これらは、自分の声を重ねて録る練習に使いやすいです。一人で同じ曲を何度も歌い、録って聞きなおす。この地道なくり返しが、録音に強い声を育てます。

教える視点:録音は「声を客観的に聞く」最高の教材

録音は、教える人にとっても強い味方です。

声は、自分の耳だけでは正しく聞こえません。でも録音すれば、外から聞いた自分の声が分かります。生徒さんに自分の声を録ってもらうと、「ここがぶれている」と一緒に確かめられます。言葉だけより、ずっと伝わります。

将来、録音の指導をする道もあります。マイクの前で歌うコツを教える仕事です。歌う人を支える、たのもしい役わりです。歌う側だけが、声の道ではありません。

なお、声を長く使うと、のどがつかれることがあります。痛(いた)みや強い不調があれば、無理をせず専門の機関へ相談してください。

自分に合う道を、ためしてみてください

ここで紹介したのは、選べる道の一つです。仕事を約束するものではありません。歌って録る側か、教えて支える側か。どちらに心がひかれるかは、人それぞれです。

自分がどの声に向いているか、適性診断で整理してみてください。今の自分に合う一歩が、見つかるはずです。

よくある質問

歌がとても上手でないと、録音の仕事には参加できませんか?
役わりによります。中心で歌う声もあれば、ハモる声や合唱の一員もあります。大切なのは、同じ声を安定して出せることです。まずは家で録音の練習から始められます。
練習に使う曲は、どう選べばよいですか?
版権が切れた曲(パブリックドメイン)が安心です。滝廉太郎の童謡やシューベルトの歌曲などです。だれでも自由に使えるので、録って聞きなおす練習に向いています。
歌う自信がなくても、録音に関わる道はありますか?
あります。歌い手を支える指導の道です。録音は声を客観的に聞ける教材なので、教える場面でも役立ちます。歌う側だけが声の道ではありません。

参考にした一次情報

  • MUSEION 版権切れ声楽データベース vocal_works(童謡・歌曲・合唱のパブリックドメイン楽曲)
  • MUSEION 声楽用語事典(発声生理・共鳴の章)