肋骨を広げる呼吸のやり方

やり方ケン監修: 上野目 泰之8

肋骨を横へ広げて吸うと息が長くもち、のどもラクになります。しくみ・手順・教え方をやさしく解説します。

まず結論:肋骨を横へ広げて吸うと、息が長くもち、のどがラクになります

肋骨を横に広げる呼吸は、声を出すための土台になります。おなかだけをふくらませる呼吸より、息をたくさんためられます。すると、長いフレーズを歌っても声がぶれにくくなります。このページでは、そのしくみと、やり方の手順を、やさしく説明します。

どんなしくみなの?

肋骨は、むねを囲んでいる骨のかごです。このかごは、横や後ろに広がる動きができます。

息を吸うとき、体の中では二つのことが同時に起きます。

  • 横かくまく(むねとおなかの間にある、うすい筋肉のまく)が下に下がる
  • 肋骨と肋骨の間の筋肉が、肋骨を外へ広げる

この二つがそろうと、空気の入る部屋が大きくなります。つまり、たくさん吸えます。むせいおんの世界では、これを「肋骨と横かくまくの呼吸」と呼びます。前・横・後ろが、まんべんなくふくらむのが理想です。

いきなり全部はむずかしい

「むねだけ」「おなかだけ」にかたよると、息はうまくたまりません。とくに、肩が上がる吸い方は、つかれやすくて向いていません。

大切なのは、肋骨を「広げたまま」少しキープすることです。これができると、声を支える力が安定します。

やり方の手順

次の順番でためしてください。

  • いすに、せすじをのばして、軽くこしかける
  • 両手のひらを、わきばら(肋骨の横)にそっとあてる
  • 鼻からゆっくり息を吸う。手をおし返すように、肋骨を横へ広げる
  • 広がった感じを、二びょうほどキープする
  • 細く長く、口から息をはく。肋骨はすぐにしぼませない

うまくいくと、手のひらが外へおされる感じがあります。鏡で、横の動きを見るのもよい方法です。

「背中で吸う」というイメージも役に立ちます。後ろの肋骨が広がると、呼吸がもっと深くなります。

教えるときに役立つこと

教える相手は、最初は感覚をつかめないことが多いです。言葉だけで「広げて」と言っても、伝わりにくいです。

そこで、次のくふうが効きます。

  • 生徒のわきばらに、生徒自身の手をあてさせる。動きを手で感じてもらう
  • 「手をおし返してね」と、目あてをはっきり伝える
  • 鏡を使い、横の広がりを目で確かめてもらう
  • 細いストローに、長く息をはく練習を組み合わせる

人によって、つかみやすいイメージはちがいます。「横」「後ろ」「広げたまま」など、言いかえをいくつか用意しておくと、相手に合わせて選べます。

なお、肋骨やわきばらに痛みや強い違和感があるときは、無理をしないでください。その場合は、医療機関など専門のところへ確認してください。指導は、あくまで「学んで、できるようになる」ためのものです。

さいごに

肋骨を広げる呼吸は、数週間つづけると、だんだん自然になります。あせらず、少しずつでだいじょうぶです。

声を教える仕事が自分に向いているか、気になった方は、セルフチェックで確かめてみてください。気軽な一歩として、おすすめです。

専門語の前に戻る場所

僕の入口は、いつも特別な舞台だったわけではありません。入口は音楽そのものより、理科室で見た音の波形でした。高校で合唱を始め、体の中で起きていることに興味を持ちました。その頃は声楽サークルと音響の勉強会に参加。発声の説明で人を傷つけてしまう怖さを知り、感覚語と解剖学の翻訳を意識するようになりました。ここで書くときも、読者が自分の足元から考えられる順番を大切にします。

発声の話は、専門語が増えるほど自分の体から遠く感じられることがあります。

学生のころ、波形や録音を見ながら声を考えていた時期がありました。でも数字だけを見ると、歌っている本人の怖さを落としてしまうことがあります。そこを忘れないようにしています。

「肋骨を広げる呼吸のやり方」も、いきなり結論から入ると少し遠い話になります。僕は、読者が今日の自分に引き寄せて考えられる言葉から置いていきたいです。専門的な話でも、最後は「痛みがあるなら止める」「録音で一つだけ確認する」に戻したいです。

耳が拾っている変化

バロックの整った旋律、母音の流れが見えやすいイタリア歌曲、構造が美しい練習曲。曲の派手さより、声がどう動くかを見ます。その聞き方が、僕の中では「呼吸法」の見方にもつながっています。リズムはメトロノームに合わせるより、息の始まりと子音の位置を観察します。走る人には拍より先に呼吸を見ます。声は白黒で判定するより、動いたところを拾うほうが続きます。

同じ「肋骨呼吸」でも、歌う人、話す人、教える人、運営する人では見える景色が変わります。僕はその違いを、向き不向きの一言で終わらせたくありません。声の高さ、言葉の置き方、リズムへの乗り方、安心する響き。その人が自然に選んできたものの中に、次に伸ばせる方向が残っています。

練習が重くなるとき

肋骨の広がりを考えるとき、僕は大きく吸うことより、息を入れたあとに体が固まっていないかを見ます。脇腹に手を当て、吐いたあとに少し戻る感覚を確かめる。発声の言葉が難しい日ほど、触れてわかる小さな変化に戻ります。

調べ始めると、正しい方法、避けたほうがよい方法、経験者の意見が一度に出てきます。どれも大事に見えるので、最初の一歩が重くなります。

そんなとき、僕は「無理のある日は練習を止める」くらいの小さな確認まで戻します。大きな問題として抱える前に、一回の録音、一文の読み方、次の予約の声かけのように切り出す。そこまで小さくすると、今日扱える範囲が見えてきます。

答えを急がない整理

迷いが強いときは、いきなり答えを決めずに、次の三つへ分けてみてください。

  • 今すぐ試せること
  • 誰かに見てもらったほうがよいこと
  • まだ決めなくてよいこと

この分け方をすると、「呼吸法」の不安と「肋骨呼吸」の不安が少し離れて見えます。全部を同じ重さで抱えなくていい。僕も、遠回りの中で何度もこの考え方に助けられてきました。

そのため、感覚を否定せず、ただし体の話は言い切りすぎない線引きを大切にしています。

短く試して記録する

今日できることは、長く練習することではなく、短い録音を残して、楽だった瞬間と力んだ瞬間を分けて聞くことです。

紙でもスマホのメモでもかまいません。まずは「呼吸法について気になること」「肋骨呼吸について不安なこと」「今日ならできそうなこと」を一行ずつ書いてみます。

余裕があれば、「短い録音で力みを聞く」も試してみてください。大きな決断をする前に、小さく記録する。そのほうが、自分の変化に気づきやすくなります。

感覚を翻訳する

誰かに説明するときは、感覚の言葉と体のしくみをつなぐ翻訳が必要になります。

誰かの声を見るときは、正しい説明を渡す前に、相手が何を怖がっているのかを聞く必要があります。「呼吸法」の理解も、そこを飛ばすと押しつけになりやすいです。

自分が迷った場所を覚えていることは、弱さではありません。相手の迷いを急がせないための、大事な手がかりになります。

次の一回につなげる

図や専門語だけでは伝わらないので、台所の道具や風の動きにたとえて説明する癖があります。

「肋骨を広げる呼吸のやり方」に答えを出す前に、今の自分がどこで反応したかを残しておいてください。読みながら少し安心したところ、逆に不安が強くなったところ、あとで誰かに聞きたいところ。そのメモが次の入口になります。

声は体の一部なので、痛みや強い違和感があれば練習を止め、専門機関に確認する前提も忘れないでください。

声や音楽の道は、きれいな直線だけでは進みません。立ち止まった日も、あとから見れば必要な確認だったとわかることがあります。

声診断に渡す前のメモ

ここまで読んで、「自分の場合はどこから考えればいいのだろう」と感じたら、LINEの声診断で一度整理してみてください。声診断は、正解を決めつけるためのものではありません。今の声の悩み、興味のある働き方、学びに使える時間を分けて、自分に合う入口を見つけるための確認です。

僕が読者に持って帰ってほしいのは、焦りではなく、次に試す一つの行動です。「呼吸法」が気になるなら、その理由を一文で残す。「肋骨呼吸」に不安があるなら、誰に相談できそうかを書いておく。声診断に進む前にそれだけでもメモしておくと、結果を見たときに自分の感覚と照らし合わせやすくなります。

声の仕事も、声の学びも、入口は一つではありません。遠回りに見える時間の中に、その人らしい強みが残っていることがあります。今の自分の声をどう扱いたいのか、どんな人に届けたいのか。そこから静かに考え始めることが、長く続く道につながります。

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よくある質問

おなかの呼吸と、どこがちがいますか?
おなかだけをふくらませる呼吸は、横かくまくが中心です。肋骨を広げる呼吸は、それに加えて、肋骨を横や後ろへも広げます。空気の入る部屋がより大きくなるので、息が長くもちやすくなります。
うまく広がっているか、どう確かめますか?
わきばら(肋骨の横)に手をあてて吸ってみてください。手のひらが外へおされたら、肋骨が広がっています。鏡で横の動きを見るのも、わかりやすい方法です。
毎日どのくらい練習すればよいですか?
短い時間でも、毎日つづけるのがおすすめです。数週間ほどで、だんだん自然な動きになっていきます。痛みや強い違和感を感じたら、無理をせず、専門のところへ確認してください。

参考にした一次情報

  • MUSEION 声楽用語事典(呼吸(肋骨)の章)

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