メッサ・ディ・ヴォーチェは、ひとつの音を「だんだん大きく、だんだん小さく」変えていく古い歌の技です
これは、イタリアの古い歌い方「ベルカント」で生まれました。ひとつの音を保ったまま、音の大きさだけを上げ下げします。音の高さや声の色は変えません。これがこの技のいちばん大事なところです。
どういうしくみか
メッサ・ディ・ヴォーチェは、3つの場面でできています。
- はじめ: とても小さな声(ピアニッシモ)で出します
- まんなか: だんだん大きくして、いちばん大きな声まで上げます
- おわり: また少しずつ小さくして、元の小さな声にもどします
つまり「小さい → 大きい → 小さい」という山の形になります。
むずかしいのは、声の色をそろえたままにすることです。ふつう、声を大きくすると音の高さや色が変わりやすくなります。それを変えずに、大きさだけを動かします。そのためには、3つの力をうまく合わせる必要があります。
- 息のささえ: 息をゆっくり、むらなく出す力
- のどの閉じ方: 声を出すひだの合わさり方を細かく調える力
- ひびき: 体の中で声を大きくひびかせる場所をたもつ力
この3つがそろってはじめて、なめらかな山の形ができます。
昔から大事にされてきた技
この技は、今ふいに生まれたものではありません。300年ほど前から、歌の先生たちが本に書いてきました。トージやマンチーニ、ガルシアといった昔の先生が、その出し方を細かく残しています。
つまりメッサ・ディ・ヴォーチェは、長い時間をかけて受けつがれてきた「歌の土台」です。今でも多くの歌い手が、毎日の練習に取り入れています。
練習の手順(やさしい例)
いきなり完ぺきにやろうとしなくて大丈夫です。次の順番で少しずつ進めます。
- まん中くらいの高さの、出しやすい音をひとつ選びます
- まず小さな声で、まっすぐ長くのばします(これをロングトーンといいます)
- なれてきたら、その音をゆっくり大きくしていきます
- 次に、ゆっくり小さくもどしていきます
- 録音して、音の高さや色が変わっていないか自分で聞きます
高い音や低い音は、後まわしで大丈夫です。出しやすい高さから始めるのが近道です。
なお、のどに痛みや強い違和感を感じたら、無理をせず練習を止めてください。痛みや強い違和感があれば、専門機関へ確認してください。
教えるときに役立つこと
教える側に立つと、この技は「声を見える形にする道具」になります。生徒の今の力が、はっきり分かるからです。
- 大きさを変えると色も変わる生徒には、まず小さい声のロングトーンだけを練習してもらいます
- 大きくするとき息が続かない生徒には、息のささえから見直します
- 小さくするときに声がかすれる生徒には、のどの閉じ方をやさしく確かめます
このように、つまずいている場所ごとに練習を変えられます。1つの技の中に、息・のど・ひびきの3つが全部入っているからです。だから生徒の弱いところを見つける手がかりになります。
また、上手・下手を点数で決めつけないことも大切です。「ここまではできている」と、できている部分を先に伝えると、生徒は前向きに続けられます。
声を教える仕事に向いているかどうか、気になった方は、**セルフチェックで確かめてみてください。**短い時間で、自分の強みを知るきっかけになります。
専門語の前に戻る場所
入口は音楽そのものより、理科室で見た音の波形でした。高校で合唱を始め、体の中で起きていることに興味を持ちました。そのあとにその頃は声楽サークルと音響の勉強会に参加。発声の説明で人を傷つけてしまう怖さを知り、感覚語と解剖学の翻訳を意識するようになりました。声のことを書くとき、僕は入口が小さかった頃の感覚を、できるだけ忘れないようにしています。
発声の話は、専門語が増えるほど自分の体から遠く感じられることがあります。
学生のころ、波形や録音を見ながら声を考えていた時期がありました。でも数字だけを見ると、歌っている本人の怖さを落としてしまうことがあります。そこを忘れないようにしています。
「メッサ・ディ・ヴォーチェとは」も、いきなり結論から入ると少し遠い話になります。僕は、読者が今日の自分に引き寄せて考えられる言葉から置いていきたいです。専門的な話でも、最後は「痛みがあるなら止める」「録音で一つだけ確認する」に戻したいです。
耳が拾っている変化
好きな曲を聞くとき、僕はリズムの感じ方や息の置き方をよく見ます。バロックの整った旋律、母音の流れが見えやすいイタリア歌曲、構造が美しい練習曲。曲の派手さより、声がどう動くかを見ます。だから「メッサ・ディ・ヴォーチェとは」でも、方法の名前より、その人の声が少し動く瞬間を見ます。
声や音楽の選び方には、その人がこれまで何を大切に聞いてきたかが出ます。強い声に惹かれる人もいれば、語尾の柔らかさに安心する人もいます。僕は「ベルカント」を、そういう聞き方の癖まで含めて見ています。
練習が重くなるとき
僕が「メッサ・ディ・ヴォーチェとは」を考えるとき、最初に戻るのは専門語ではなく、短い録音や鏡の前の一息です。「無理のある日は練習を止める」のような小さな確認を挟むと、「メッサ・ディ・ヴォーチェ」というテーマが体の反応として見えやすくなります。
調べ始めると、正しい方法、避けたほうがよい方法、経験者の意見が一度に出てきます。どれも大事に見えるので、最初の一歩が重くなります。
そんなとき、僕は「短い録音で力みを聞く」くらいの小さな確認まで戻します。大きな問題として抱える前に、一回の録音、一文の読み方、次の予約の声かけのように切り出す。そこまで小さくすると、今日扱える範囲が見えてきます。
答えを急がない整理
迷いが強いときは、いきなり答えを決めずに、次の三つへ分けてみてください。
- 今すぐ試せること
- 誰かに見てもらったほうがよいこと
- まだ決めなくてよいこと
この分け方をすると、「メッサ・ディ・ヴォーチェ」の不安と「ベルカント」の不安が少し離れて見えます。全部を同じ重さで抱えなくていい。僕も、遠回りの中で何度もこの考え方に助けられてきました。
そのため、感覚を否定せず、ただし体の話は言い切りすぎない線引きを大切にしています。
短く試して記録する
今日できることは、長く練習することではなく、短い録音を残して、楽だった瞬間と力んだ瞬間を分けて聞くことです。
紙でもスマホのメモでもかまいません。まずは「メッサ・ディ・ヴォーチェについて気になること」「ベルカントについて不安なこと」「今日ならできそうなこと」を一行ずつ書いてみます。
余裕があれば、「鏡の前で姿勢を見直す」も試してみてください。大きな決断をする前に、小さく記録する。そのほうが、自分の変化に気づきやすくなります。
感覚を翻訳する
誰かに説明するときは、感覚の言葉と体のしくみをつなぐ翻訳が必要になります。
誰かの声を見るときは、正しい説明を渡す前に、相手が何を怖がっているのかを聞く必要があります。「メッサ・ディ・ヴォーチェ」の理解も、そこを飛ばすと押しつけになりやすいです。
自分が迷った場所を覚えていることは、弱さではありません。相手の迷いを急がせないための、大事な手がかりになります。
次の一回につなげる
図や専門語だけでは伝わらないので、台所の道具や風の動きにたとえて説明する癖があります。
僕が最後に置きたいのは、急いで決めるための結論ではありません。「メッサ・ディ・ヴォーチェとは」を読んだあと、自分の声や働き方を少し具体的に見られることです。
声は体の一部なので、痛みや強い違和感があれば練習を止め、専門機関に確認する前提も忘れないでください。
今日残すなら、一つだけで十分です。録音する、メモする、誰かに相談する、声診断で現在地を見る。その小さな行動が、次の記事や次の練習につながります。
声診断で見えてくる次の一歩
ここまで読んで、「自分の場合はどこから考えればいいのだろう」と感じたら、LINEの声診断で一度整理してみてください。声診断は、正解を決めつけるためのものではありません。今の声の悩み、興味のある働き方、学びに使える時間を分けて、自分に合う入口を見つけるための確認です。
僕が読者に持って帰ってほしいのは、焦りではなく、次に試す一つの行動です。「メッサ・ディ・ヴォーチェ」が気になるなら、その理由を一文で残す。「ベルカント」に不安があるなら、誰に相談できそうかを書いておく。声診断に進む前にそれだけでもメモしておくと、結果を見たときに自分の感覚と照らし合わせやすくなります。
声の仕事も、声の学びも、入口は一つではありません。遠回りに見える時間の中に、その人らしい強みが残っていることがあります。今の自分の声をどう扱いたいのか、どんな人に届けたいのか。そこから静かに考え始めることが、長く続く道につながります。
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よくある質問
- メッサ・ディ・ヴォーチェって何ですか
- ひとつの音を保ったまま、音の大きさを「小さい→大きい→小さい」と山の形に変える歌の技です。イタリアの古い歌い方ベルカントで生まれました。音の高さや声の色は変えず、大きさだけを動かすのがポイントです。
- むずかしい技ですか。初心者でもできますか
- 上級者向けの技ですが、初めの一歩は誰でも始められます。まず出しやすい高さの音を、小さな声でまっすぐ長くのばす練習からです。慣れてから、ゆっくり大きく・小さくを足していきます。録音して自分の声を聞くと進みが分かります。
- のどが痛くなったらどうすればいいですか
- すぐに練習を止めて、声を休めてください。無理に続けると負担が大きくなります。痛みや強い違和感があれば、専門機関へ確認してください。教える立場の人も、生徒に同じ声かけをしておくと安心です。
参考にした一次情報
- MUSEION 声楽用語事典(古典技法の章)
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