声量のしくみ|大きな声の正体

解説ケン監修: 上野目 泰之4

大きな声は力で押すのではなく、息の圧力・声帯のかみ合わせ・響きの3つの協力で生まれます。

大きな声は「力」ではなく「効率」で決まります。声を遠くまで届ける正体は、息の圧力・声帯のかみ合わせ・響きの3つの協力です。

声を仕事にする人ほど、声量の正体を知っておくと役に立ちます。理由は、力で押す指導はのどをいためやすいからです。ここでは、大きな声のしくみを、やさしい言葉でほどいていきます。

大きな声をつくる3つの正体

声の大きさは、音の強さを数で表したもので、デシベルという単位で測ります。会話はだいたい60、よく通る歌声は90から100ほどになります。この数字を生み出すのは、つぎの3つです。

  • 息の圧力: のどの下にたまる息の力です。これが音のエンジンになります。
  • 声帯のかみ合わせ: 声を出すひだ(声帯)が、ちょうどよく合わさることです。
  • 響き: 体やのどの空間で音がふくらみ、遠くまで届くことです。

この3つがそろうと、声は楽に大きくなります。どれか1つだけをむりに強めると、バランスがくずれます。

押すほど大きくなる、はまちがい

大きな声というと、息を強く押し出す姿を思いうかべます。でも、それだけでは正しくありません。

研究では、低い圧でも大きな音が出せると分かっています。これを発声の効率といいます。少ない力で大きく響かせるほど、よい状態です。

声帯を強くしめつけると、音はかえってつまります。負担もふえます。大切なのは、しめる強さではなく、合わせ方のていねいさです。

響きが声を遠くへ運ぶ

同じ強さの息でも、響きがあると声は遠くまで届きます。これを声の通りやすさと考えてください。

歌い手の声には、高めの成分が集まる帯があります。この帯がよく出ると、伴奏の上でも声が前に飛びます。マイクなしの舞台で声が通る人は、力ではなく、この響きを上手に使っています。

つまり、声量とは「大きく出す力」よりも、「遠くまで運ぶ効率」に近いのです。これがこの記事のいちばん伝えたいことです。

のどを守るために

大きな声の練習は、のどに負担をかけることがあります。長い時間、大きすぎる声を出し続けると、声帯はつかれます。

無理を感じたら、すぐに休んでください。そして、痛みや強い不調があれば、専門機関へ相談してください。学びは、健康があってこそ続きます。

教えるときに役立つこと

声量を教えるとき、「もっと大きく」「もっと押して」とだけ言うのは危険です。生徒は力みで答えようとし、のどをいためやすくなります。

つぎの順で伝えると、安全に大きくできます。

  • まず息を流すことを意識させます。押すのではなく、流す感覚です。
  • つぎにていねいに声を合わせる練習をします。やさしい出だしから始めます。
  • 最後に響く場所をさがすよう導きます。ハミングや細い管(ストロー)を使う練習が役立ちます。

スマートフォンの音量を測るアプリで、声の大きさを数で見せるのもよい方法です。数字で確かめると、力まずに大きくできたことが、生徒にも伝わります。

声量は、才能ではなく、しくみの理解で育ちます。教える側がしくみを言葉にできると、生徒は安心して声を伸ばせます。

あなたが声を教える人に向いているか、適性診断で確かめてみてください。

よくある質問

声量を上げるには、息を強く押せばよいですか?
押すだけでは正しくありません。研究では、低い圧でも大きな音は出せます。息を流す感覚、ていねいな声の合わせ方、そして響きの3つがそろうと、楽に大きくなります。むりに押すとのどをいためやすいので気をつけてください。
声が小さいのは、生まれつきの才能の問題ですか?
才能だけで決まるものではありません。声量は、しくみを理解して練習することで育ちます。息・かみ合わせ・響きを順に整えると、声は通りやすくなります。安心して取り組んでください。
大きな声の練習で、のどが痛くなったらどうしますか?
まずすぐに練習をやめて休んでください。声を出し続けると声帯はつかれます。痛みや強い不調が続くときは、自分で判断せず、専門機関へ相談してください。健康があってこそ学びは続きます。

参考にした一次情報

  • MUSEION 声楽用語事典(音響(声量)の章)