30代からボイストレーナーを目指す

やり方ハル監修: 上野目 泰之4

国家資格のいらないボイストレーナーを30代から目指す人へ。無資格を説明力に変える方法、最初の3か月で積む土台、教える日の進め方まで、具体的な手順でまとめたガイドです。

30代スタートは「遅れ」ではなく材料になる

ボイストレーナーは、30代から始める人がめずらしくない仕事です。声を教える仕事には、国の資格がありません。だから年れいで門前ばらいになることはなく、何を学んだかで評価されます。

このガイドは「習い事として歌ってきただけ」という人を想定しています。教える側へ回るときに、最初に何を押さえればよいかを順にまとめます。なお、ここで紹介するのは収入を約束する話ではなく、学びの設計図です。

「無資格」を弱みではなく説明力に変える

ネット上には「ボイストレーナー国家資格」という言葉が出回ることがあります。これは正しくありません。

  • 国家資格そのものが、存在しません。
  • ない資格を、持っているように見せるのはやめましょう。経歴の信頼をそこないます。
  • 代わりに「どこで・何を・どれだけ学んだか」を、自分の言葉で1分で話せるようにします。

たとえば「半年間、発声のしくみを学び、月に4人の友人に試して記録を取った」。この一文があるだけで、相手の安心感は大きく変わります。

最初の3か月で積む3つの土台

いきなり生徒を取る必要はありません。次の順番なら、独学でも進めやすいです。

  • 声のしくみ:息・声帯・ひびきの3つに分けて、用語を10個覚える。
  • 聞き分ける耳:1日5分、上手な人と自分の録音を聞き比べてメモする。
  • 伝える言葉:直す点を「のどに力が入っている」のように、体の感覚で言いかえる。

この3つは才能ではなく、回数でのびます。週に15分でも続けるほうが、月1回まとめてやるより身につきます。

30代の経験は、指導の場で効いてくる

これまでの仕事や子育てで使ってきた力は、そのまま教える力につながります。

  • 初対面の人と、世間話で空気をほぐせる。
  • 相手が言いよどんだとき、先回りして言葉をそえられる。
  • うまくいかない日でも、こつこつ付き合える。

歌が完ぺきである必要はありません。「上手に歌う力」と「上手に伝える力」は、別の筋肉だからです。

のどに痛みが出たら、練習より体が先

声を使う練習では、のどがつかれたり痛んだりすることがあります。そのときは、がまんしないでください。

  • 強い痛みや、声がれが2週間以上続くときは、練習を止めます。
  • 不安が残るなら、耳鼻いんこう科などの専門機関に相談してください。

このガイドは病気を見分ける場ではありません。体を守る習慣が、長く教え続ける土台になります。

教える日の合言葉は「今日はここだけ」

伝える側に回ると、つい一度に多くを直したくなります。でも、人は一度に1つしか直せません。

  • 今日の課題を、1つにしぼって伝える。
  • できた瞬間に、その場で声に出してほめる。
  • 残りの課題は、メモに書いて次回へまわす。

この進め方なら、相手は自信を保ったまま前に進めます。教える側も、何を見ればよいか定まって楽になります。

向き不向きは、考えるより測ったほうが早い

ここまで読んで胸が動いたなら、もう入口に立っています。

次にやることは、自分の今の持ち味を見える形にすることです。話すのが好きか、聞くのが得意か、こつこつ型か。こうした傾向は、教え方の相性に直結します。

「こえ仕事」の適性診断で、あなたの傾向を3分で言葉にしてみませんか。 足りない点ではなく、今ある材料から見つける診断です。

よくある質問

30代から始めても、おそくないですか。
おそくありません。声を教える仕事に国の資格はなく、学んで身につける力が中心です。これまで人と接してきた経験は、教える場面でむしろ強みになります。
ボイストレーナーに国家資格は必要ですか。
必要ありません。国家資格そのものが存在しません。大切なのは、声のしくみや伝え方を学び、できるようになることです。ない資格を持っているように見せるのは、経歴の信頼をそこなうので避けてください。
歌が上手でないと、教えられませんか。
そんなことはありません。上手に歌う力と、上手に伝える力は別の筋肉です。聞き分ける耳と分かりやすく言いかえる力は、1日5分の録音比べのような練習でのびていきます。