生徒との信頼関係の築き方

やり方みお監修: 上野目 泰之3

生徒との信頼関係は才能ではなく手順で築けます。安心・約束・観察・言葉がけという4つの土台を、現場の具体例とともにやさしく解説します。

結論:信頼は才能ではなく、手順で築けます。安心・約束・観察・言葉がけの4つが土台です

生徒との信頼は、生まれつきの性格で決まるものではありません。だれでも学べて、練習でうまくなります。この記事では、信頼を作る4つの土台を、順番にお伝えします。

まずは「安心できる場」を作る

信頼の第一歩は、生徒が安心することです。声は、心の状態がそのまま出ます。きんちょうしていると、のどがしまって、声が出にくくなります。

安心を作るコツは、次のとおりです。

  • 最初の数分は、声の話をしない。今日の調子や、好きな曲を聞く。
  • うまくいかなくても、責めない。「できないのが普通」と伝える。
  • 笑顔と、ゆっくりした話し方を心がける。

「ここでは失敗してもいい」と感じてもらう。それだけで、生徒の声は変わります。

小さな約束を、必ず守る

信頼は、小さな約束の積み重ねで育ちます。

  • 始まる時間と終わる時間を守る。
  • 「次は、この練習をします」と言ったら、次回ちゃんとやる。
  • メッセージへの返事を、後回しにしない。

逆に、約束を一度やぶると、信頼は大きく下がります。立派な指導よりも、地味な約束を守ることのほうが、ずっと効きます

よく見て、相手に合わせる

生徒は一人ひとりちがいます。同じ言葉が、ある人には届き、別の人には届きません。だから、よく観察します。

  • 顔の表情を見る。困っていないか。つまらなそうでないか。
  • 声のかれ具合や、息の様子を見る。
  • 「今のはどうでしたか」と、感想を聞く。

相手をよく見て合わせると、生徒は「自分を見てくれている」と感じます。これが、深い信頼につながります。

なお、声がかれて治らない、のどに痛みや強い不調があるときは、無理をさせず、耳鼻いんこう科などの専門機関へ相談するよう、やさしく伝えてください。

ほめ方と、直し方の言葉を選ぶ

同じ内容でも、言葉の選び方で、伝わり方は大きく変わります。

ほめるときは、具体的にほめます。

  • ×「いい感じ」
  • ◯「さっきより、息が長くつづきましたね」

直すときは、人ではなく、やり方を指します。

  • ×「センスがないですね」
  • ◯「肩の力をぬくと、もっと楽になりますよ」

できた所を先に伝えてから、直す所を1つだけ。これだけで、生徒は前向きになります。

教えるときに役立つこと

ここまでの4つは、すべて練習でうまくなります。指導者を目指す人は、毎回のレッスンで1つずつ試すとよいです。

  • 今日は「安心の場づくり」だけ意識する。
  • 次は「具体的にほめる」を5回やってみる。
  • 終わったら、ノートに「何が効いたか」を書く。

このふり返りを続けると、自分の型ができてきます。信頼を築く力は、声の技術と同じで、学べる技術です。

そして、これは大きな強みになります。声を直す技術が高い人はたくさんいます。でも、生徒が安心して長く通いたくなる場を作れる人は、多くありません。人と向き合うのが好きな方には、声を教えるという道が向いているかもしれません。一人で悩まず、学びながら身につけていけます。

声を教える仕事に向いているか気になった方は、適性診断で確かめてみてください。あなたの強みが、きっと見つかります。

よくある質問

生徒との信頼関係は、性格が明るくないと築けませんか?
いいえ、性格は関係ありません。安心できる場を作る、約束を守る、よく観察する、言葉を選ぶ。この4つは、だれでも練習でうまくなります。物静かな人でも、ていねいに向き合えば、深い信頼を築けます。
生徒をどう直せばよいか、いつも迷います。コツはありますか?
まず、できた所を具体的にほめてから、直す所を1つだけ伝えてください。人ではなく、やり方を指すのが大切です。『センスがない』ではなく『肩の力をぬくと楽になる』のように、次にやることが分かる言葉にすると、生徒は前向きになります。
信頼関係づくりは、独学でも身につきますか?
はい、毎回のレッスンで1つずつ試し、ふり返りをノートに書くと、少しずつ自分の型ができます。ただ、一人だと気づきにくい点もあります。仲間や先輩から助言をもらえる場があると、より早く身につきます。独りで悩まず学べる環境を選ぶとよいです。

参考にした一次情報

  • MUSEION 指導者育成プログラム(生徒との関わり方の章)