指導者が知っておきたい体のしくみ

解説ケン監修: 上野目 泰之3

声は体という楽器から生まれます。指導者がまず知っておきたい姿勢・息・のどの土台を、やさしい言葉で説明します。

指導者は、声より先に「体」を見ます

声は、体という楽器から生まれます。だから教える人は、まず体のしくみを知っておくと役に立ちます。むずかしい医学の知識はいりません。大切なのは、姿勢・息・のどという3つの土台を、やさしい言葉で説明できることです。

ここを押さえると、生徒さんの不調の原因に気づきやすくなります。

土台① 姿勢:すべての始まり

よい声は、よい姿勢から生まれます。体がかたむいていると、息の通り道がせまくなるからです。

見てほしいのは、次の3点です。

  • — まっすぐ上にあるか。前に出ていないか。
  • — 力が入って上がっていないか。
  • — 地面をしっかりふんでいるか。

立ち方をなおすだけで、声が変わることはよくあります。声を直す前に、まず姿勢を見る。これが指導の出発点です。

土台② 息:声を動かす力

声は、はく息から生まれます。息は、声を動かす力です。

ここで大切なのは、お腹まわりの動きです。息をすうと、お腹のあたりが少しふくらみます。はくと、ゆっくりもどります。この動きが、息の「支え」になります。

支えがあると、声はまっすぐ安定します。支えがないと、声はゆれたり、すぐ切れたりします。「お腹から声を」という言葉は、この支えのことを言っています。

土台③ のど:とてもデリケートな場所

のどの奥には、声帯という小さな2枚のひだがあります。息がここを通ると、ひだがふるえて音になります。

このひだは、とてもデリケートです。どなったり、むりに使ったりすると、はれてしまいます。だから指導では、声をこわさない使い方を何より優先します。

次のサインが出たら、すぐに休みます。

  • 声がかれてきた
  • のどに痛みがある
  • 話すのもつらい

無理を続けると、声を長く失うこともあります。痛みや強い違和感があるときは、専門の機関に相談してください。ボイストレーニングは、診断や治療をする仕事ではありません。ここははっきり区別します。

3つの土台は、つながっています

姿勢・息・のどは、バラバラには働きません。よい姿勢が、よい息を生む。よい息が、のどを守る。この流れがつながったとき、らくに声が出ます。

だから不調を見るときは、「どの土台がくずれているか」を切り分けて考えます。

教えるときに、体のしくみが役立つ理由

しくみで考えられると、感覚の言葉を「翻訳」できます。

たとえば「もっと響かせて」。これは口やのどの空間を広げる話だと、言いかえられます。「のどに力が入っているよ」も、肩や姿勢から見直せます。

感覚を、体の言葉に置きかえる。これができると、生徒さんは「なぜそうするのか」を理解できます。納得して練習できる人は、上達も早くなります。

そして体のしくみを知る人は、生徒さんの声を守れます。これは指導者の大きな役目です。声を仕事にする道のひとつに、この教える道があります。

まず、自分の向き不向きを知ろう

体のしくみは、学べば必ず身につきます。特別な才能はいりません。順番に学べば、誰でも説明できるようになります。

「自分は教える側に向いているかな」と感じたら、独りで悩まなくて大丈夫です。適性診断で確かめてみてください。あなたの強みと、合う学び方が見えてきます。

よくある質問

体のしくみを知らないと、教えられませんか?
教えること自体はできます。でも、しくみを知っていると、生徒さんの不調の原因に気づきやすくなります。安全に教えるための、大切な土台になります。
むずかしい医学の知識が必要ですか?
いいえ。お医者さんのような専門知識はいりません。姿勢・息・のどという3つの土台を、やさしい言葉で説明できれば十分です。順番に学べば身につきます。
生徒さんがのどの痛みを訴えたら、どうすればいいですか?
まず練習を止めて、休ませます。ボイストレーニングは診断や治療をする仕事ではありません。痛みや強い違和感が続くときは、専門の機関に相談してもらってください。

参考にした一次情報

  • MUSEION 声楽用語事典(発声生理・呼吸・共鳴の章)