定年後のセカンドキャリアに声の指導という選択

やり方みち監修: 上野目 泰之4

定年後に声の指導を学んで始める道を、国家資格がない前提でやさしく解説。学ぶ順番、最初の生徒との向き合い方、長く働いた人ならではの「教える強み」を具体的に伝えます。

結論:声の指導は、定年後に学んで始められる仕事のひとつです

長く働いてきた人は、声の指導に向いた力をすでに持っています。人の話を最後まで聞く力。一つずつ順を追って伝える力。結果を急がず待つ力。声の出し方そのものは、これから学べば身につきます。年齢は、始めない理由にはなりません。

なぜ定年後の人に合うのか

向いている理由は、大きく3つあります。

  • 体力で押し切る仕事ではない。 すわったまま、声と耳を使って教えます。
  • これまでの経験が直接生きる。 人と向き合ってきた時間が、そのまま指導の土台になります。
  • 生徒一人から始められる。 大きな教室はいりません。週に一人、一回30分でも出発点になります。

声の指導とは、歌や話し方を学びたい人に、声の使い方を伝える仕事です。入り口は、思うよりおだやかです。

国家資格はない。だから「学んだ中身」が土台になる

大事な事実をお伝えします。ボイストレーナーに国家資格はありません。 「この免許がないと教えてはいけない」という決まりは存在しません。

これは「だれでも名乗れる」という意味でもあります。だからこそ、何を学んだかが信頼を決めます。

  • 声がどう出るか、体のしくみを学ぶ。
  • 教える順番と、言葉のかけ方を学ぶ。
  • 自分でも声を出し、感覚で確かめる。

何から、どの順で学ぶか

順番に進めると、むりがありません。目安は、はじめの3か月でこの4つです。

  1. 声のしくみを知る。 息がのどのひだ(声帯)をふるわせ、音が生まれます。まずこの一点でよいです。
  2. 自分の声で試す。 本を読むだけで終わらせず、声に出して体で覚えます。
  3. 短く教える練習をする。 家族や友人に「肩の力を抜いて、ためた息で一言だけ」と伝えてみます。一度に一つです。
  4. 学べる場を持つ。 独りで抱えず、教えてくれる人や仲間を見つけます。

一度に全部は要りません。一日10分の声出しからで十分です。

体と声で、気をつけること

声は体の一部です。だから、むりは禁物です。大きな声を出しすぎると、のどがつかれます。

教えるときも「もっと強く」ばかり言わないようにします。「ためた息でそっと」と声をかけ、休む間を入れます。

もし、声がかれて治らない日が続いたり、のどの痛みが引かなかったりするときは、自己流で直そうとせず、耳鼻いんこう科などの専門機関へ相談してください。これは生徒にも同じく伝える約束ごとです。

上手に歌えなくても、教えられる

「自分が名歌手でないと教えられないのでは」と思う人がいます。そんなことはありません。

教える力と、自分が演じる力は別ものです。名コーチが名選手とはかぎりません。指導でいちばん大切なのは、相手のつまずきに気づき、次の一歩を示すことです。

たとえば、生徒の声が硬いとき。「うまく出して」では伝わりません。「肩を下げて、ためた息を細く長く」と分けて言えると、相手は動けます。この「分けて伝える力」は、長く人と働いた人ほど自然に使えます。

  • 相手の話を、さえぎらずに聞ける。
  • あせらず、待てる。
  • 自分の失敗談を、気負わず話せる。

これらは、若い指導者がうらやむ強みです。あなたの来し方が、そのまま教える材料になります。

自分に合う学び方を、確かめてみませんか

ここまで読んで少し心が動いたなら、それが始まりの合図です。

向いているかどうかは、一人で考えるより試すほうが早く分かります。適性診断では、あなたのこれまでの仕事や人付き合いが、声の指導でどんな強みに変わるかを言葉にして返します。最初の一歩の地図として、気軽に使ってみてください。

よくある質問

ボイストレーナーになるのに、国家資格はいりますか?
いりません。ボイストレーナーには国家資格がなく、「この免許がないと教えられない」という決まりはありません。だからこそ、声のしくみや教え方をきちんと学んだという中身が、信頼の土台になります。
定年後からでも、本当に始められますか?
始められます。声の指導は体力で押し切る仕事ではなく、すわったまま声と耳を使って教えます。週に一人、一回30分からでも出発点になります。人の話を聞く力や待つ力など、長く働いてきた経験がそのまま強みになります。
自分が上手に歌えなくても、人に教えられますか?
教えられます。教える力と、自分が演じる力は別ものです。大切なのは、相手のつまずきに気づき、次の一歩を分けて示すことです。なお、声がかれて治らなかったり、のどの痛みが続いたりするときは、自己流にせず耳鼻いんこう科などの専門機関へ相談してください。

参考にした一次情報

  • MUSEION 声楽用語事典(発声のしくみの章)